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1:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI[sage] 2019/05/09(木) 21:56:44
201X年、人類は科学文明の爛熟期を迎えた。
宇宙開発を推進し、深海を調査し。
すべての妖怪やオカルトは科学で解き明かされたかのように見えた。

――だが、妖怪は死滅していなかった!

『2020年の東京オリンピック開催までに、東京に蔓延る《妖壊》を残らず漂白せよ』――
白面金毛九尾の狐より指令を受けた那須野橘音をリーダーとして結成された、妖壊漂白チーム“東京ブリーチャーズ”。
帝都制圧をもくろむ悪の組織“東京ドミネーターズ”との戦いに勝ち抜き、東京を守り抜くのだ!



ジャンル:現代伝奇ファンタジー
コンセプト:妖怪・神話・フォークロアごちゃ混ぜ質雑可TRPG
期間(目安):特になし
GM:あり
決定リール:他参加者様の行動を制限しない程度に可
○日ルール:4日程度(延長可、伸びる場合はご一報ください)
版権・越境:なし
敵役参加:なし(一般妖壊は参加者全員で操作、幹部はGMが担当します)続き33行
118:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/08/22(木) 21:25:29
「……せっかく、皆さんの呼びかけで前向きに生きようって。やり直そうって思ったのに。いきなり出てきて、死ねですって?」

吹き飛ばされたダメージからようやく回復したのか、ぐぐ、と緩慢に身を起こしながら橘音が口を開く。

「バカ言ってもらっちゃ困りますね……。確かに、アナタには何度も助けられた。恩人と言ってもいい」
「でも、それとこれとは別問題です。死ねと言われて死ねるほど、ボクたちは物分かりがよくない。どんな理由があったって――」
「一度生きると決めたんだ!その決意は、どんな困難や逆境があったって覆せやしない!」

ばっ!と白手袋に包んだ右手を大きく横に振る。

「アナタは確かに聖騎士かもしれない。人間の味方なのかもしれない」
「アナタにとって、ボクたちは滅ぼす対象でしかないかもしれない――。けれど、ボクたちも生きていたい理由がある!」
「それを不当に奪うことは、侵略と変わりない!アナタの攻撃対象である妖壊たちと、何も変わりなんてないんだ!」

「……だったら?どうだというのかな?」

「見せてあげますよ、ボクたちの力を。東京ブリーチャーズの力を!」
「ノエルさん、クロオさん、ポチさん!もう一度だけ気張ってください――ここが正念場です!」
「この『妖怪の天敵』を……返り討ちにしてあげましょう!」
続き51行
119:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:15:55
>「ありがとう、ミスター。でも、ここで帰るわけにはいかない。わたしも子どもの使いで来ているわけではないんだ」
>「時間がない……ここでやっておかなければ、きっともう二度とできないことだからね」

「何言ってんの、君は子どもの使いでしょ!? あ、ロリババアの使いって可能性もあるけど!」

“子どもの使いで来ているわけではない”は帰れと言われて帰るわけにはいかないという一般的な慣用句だろうか、
それとも文字通り、レディベアの命令ではないということだろうか。

>「ところで、イノリちゃんはいないのかい?別の天魔を倒しに行った?……そうか、それは益々都合がいい」
>「彼女に、仲間の死を見せるわけにはいかないからね……君たちは『いつのまにか滅ぼされていた』というのがいい」
>「そう。わたしは君たちを滅ぼしに来たのさ。君たちとは存外長い付き合いになったが……ここでお別れだ」

「はあ!? 散々手助けまでしといて何で今更!?」

>「君たちを始末させてもらうよ。遠慮はしない、冗談でもない。死にたくなければ、全員でかかってくることだね」
>「どうしたのかな?来ないなら、わたしから行くよ?3分くらいで片付けられるといいなあ!」

>「待て!」

横合いから突然ミカエルが現れる。続き23行
120:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:17:00
ノエルは大混乱中であった。
伝説の聖騎士の再来を望む人々の想いが作り出した一種の妖怪、と言われればシロという前例もあったのですぐに納得出来たのだが、
まさかクローンという言葉が飛び出すとは思ってもいなかった。
しかもそれは彼だけではなく、彼のようなクローンが妖壊を倒す巨大な組織が存在しているという。

>「……その通りだ……。そして、貴様の最大の任は……」

>「我がキリスト教圏の天使と聖人、それら神の信徒以外の超越的存在、化生のすべてを撃殺すること――!!」

「ええっ!? そんなことやってんの!? それって人間にとっても危険なことなんじゃ……」

組織とやらの事情を知っているらしいミカエルに疑問を投げかける。
名だたる英雄のクローンを作り妖怪の殲滅にあたらせる―― 一見人間にとっての脅威を排除するにあたっては効率的に見えるが。
仮に人々の想いから生まれた妖怪なら、『かくあれかし』の法則が働くので確かに人間の望み通りに動くだろう。
しかし科学の産物であるクローンには『かくあれかし』が働かない。
自らの存在意義に疑問を持ち人間に反旗を翻す可能性だってあるのだ。
あるいはそうならないように洗脳や改造等の何らかの措置が施されているのだろうか。
それに、人に仇成す妖壊ですら根底では人間に望まれているから存在しているのだ。
それが同じく人に望まれて存在する妖怪に倒されるのならいいが、
科学によって作られた存在が問答無用で廃除すると、世界の均衡が崩れたりはしないのだろうか。続き24行
121:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:17:58
>「さあー、ミスター!やろうか!」
>「ミスターの攻撃は大振りすぎる。こうして攻撃の『起こり』さえ察知できれば、中断させることは容易い」
>「もっと小細工を利かせる必要があるかな!君は元は人間だったのだから、創意工夫は得意なはずだよ!」
>「それから。肉を切らせて骨を断つ戦法は避けるべきだ――相手が君の予想だにしない技を持っている場合もある。このように!」

ローランは一撃一撃が必殺の威力を持っているはずの尾弐の攻撃を軽くいなし、難なく一時的に行動不能にさせる。
次は自分の番か、と身構えるノエル。

>「君たちは強い。今まで、並の妖怪ならばとっくに死んでいてもおかしくない戦いを、よく勝ち抜いてきた」
>「でもね……まだ足りない。特に、これから『奴』と直接戦うとなれば……今のままではいけないんだ」
>「『奴』は恐ろしいことを企んでいる。それは、君たちの想像を絶する計画だ。絶対に挫かなければならない悪逆だ」
>「君たちには、もっと強くなってもらわなければ。わたしなんか問題にならないくらいの強さを得てもらわなければ……」
>「でなければ……わたしも安心できないからね!」

「『奴』って……? 君は……一体……」

ローランは重要情報をうっかりポロリしてしまったようだが、問い詰める暇など与えてくれるはずは無かった。

>「おっと、そうじゃないな。わたしは君たちを殺しに来たんだった!ほらほら、行くよ!」
>「君は器用だが、過ぎたるは及ばざるが如し……ってね!使える技は多ければ多いほどいいが、半面決め手に欠ける!」続き23行
122:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:19:07
>「ポチ君。彼女を――将来を誓い合った相手を守りたいのだろう。これから戦う相手は、真っ先に君の大切なものを狙うよ」
>「ミスター。アスタロトと一緒に生きるのだろう?それは茨の道だ。だが、押し通すなら……全てを退ける力を得なければ」
>「ノエル君。運命変転の力にもっとも影響されたのが君だ――それなら。これから押し寄せる理不尽をも、覆してみたまえ!」

「話は君を倒してからってことか……!」

ローランは聖剣を抜き放つと、鞘を地面に打ち捨てた。

>「これはもう必要ない。今までは手加減してきたが……これからは本気だ。本気で、君たちを斬る」
>「聖剣デュランダルの力は、猿夢のときに見たはずだ。触れれば、斬られれば、君たちは滅びる。死でさえない、真の滅びだ」
>「それが嫌なら――わたしを斃してみせろ!!」

「鞘は捨てたら死亡フラグなんだよ!? それは困る!
そこまで思わせぶりなことをポロリしといてそのまま死んで貰ったら気になって夜も眠れないじゃん!
まあ君、殺しても死にそうにないけど!」

この期に及んで相手の心配をしているような言葉は、裏を返せばそもそもやられる前提ではないという宣言だ。
そして、吹き飛ばされた衝撃からようやく復帰してきた橘音が口を開く。

>「……せっかく、皆さんの呼びかけで前向きに生きようって。やり直そうって思ったのに。いきなり出てきて、死ねですって?」続き25行
123:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:20:55
橘音の精神世界では姿を固定されていて強力な妖術が使えなかったため、本来の得意分野ではない近接戦を主体に戦っていた。
それが今となっては幸いし、妖力はまだ充分に残っている。
深雪は、みゆきの口調で橘音に語りかけた。

「きっちゃん……もう認めてくれるよね。童の正体は最初から人に仇成す災厄の魔物だったんだよ。
それでも君が親友でいてくれるなら……童は今だけ人類の敵に立ち戻る!」

>「祈ちゃんがいないのは残念ですが……久しぶりに行きますよ!」

「「――東京ブリーチャーズ!アッセンブル!!」」

橘音と声を合わせてポーズをキメる。

>「ははッ!それはいい!実に……いいね、カッコイイよ!」

本気を出したローランが尾弐に向かってくる。
一見到底太刀打ち出来るようには思えない挙動だが、ローランは自分が人間だということを強調していた。
ならば、その性質は妖怪のものではなく人間のものに近い可能性が高い。
人間であるならば、人間の英雄は必ず化け物に打ち勝つという『かくあれかし』の加護は受けられず、自然界の物理法則を直接的に受ける。
そこに勝機があるのかもしれない。続き26行
124:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/08/24(土) 11:22:14
今まさに放たれんとする必滅の刃を前に、今は人類の敵である深雪は思う。
自分勝手な人間が憎い、その人間に媚びへつらい味方する者も憎い――
コロシテヤル、たとえ相打ちになってでも――
災厄の魔物深雪は雪妖界の安寧を保つために廃除された雪ん娘達の魂が結集して生まれたもの。
妖怪の全てが敵と公言する存在を目の前にして、その時の怒りが出ているのだろう。
しかし、心の奥底でみゆきが語りかける。 

――違うよね? 君の、童の本当の願いは……

一説によると、怒りというのは希望が叶わなかったことによる二次的感情であるという。
人間の身勝手のために廃除されて人間に恨みをもち人類の敵となった、それが示すのは廃除などされたくなかったということ。
つまり――

「童(妾)は、我は、僕は――生きたい!
ずっと橘音くんとクロちゃんを見守って、ポチくんをモフモフして、祈ちゃんの味方でいたい!」

深雪はそう叫びながら、何を思ったか理性の氷パズルを眼前上空に放り投げる。

「お母さん、カイ、ゲルダ、力を貸して――!」
続き12行
125:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:52:36
>「ありがとう、ミスター。でも、ここで帰るわけにはいかない。わたしも子どもの使いで来ているわけではないんだ」
>「時間がない……ここでやっておかなければ、きっともう二度とできないことだからね」
>「そう。わたしは君たちを滅ぼしに来たのさ。君たちとは存外長い付き合いになったが……ここでお別れだ」
>「君たちを始末させてもらうよ。遠慮はしない、冗談でもない。死にたくなければ、全員でかかってくることだね」

>「はあ!? 散々手助けまでしといて何で今更!?」

「取り付く島も無し……交渉決裂だな」

有無を言わさぬ宣戦布告。それを聞いた時の尾弐の心境は……危機感こそ募るものの、驚愕しているノエルに比べれば落ち着いていた。
それは、理性では無く直感で、眼前の男と戦わざるを得ないであろうという未来を尾弐が感じていたからだろう。
手に握る硝子の灰皿を握り潰し、その掌の中で無数のガラス片へと変える。
Rが踏み出す一歩に合わせるように、尾弐はザリ、と地を踏みしめ

>「待て!」
>「ようやく見つけたぞ――、貴様!こんなところにいたのか!今までどこに雲隠れしていたかと思えば……!」

だが、その直後。強烈な神気がその場を覆い、吐き気を催す程に清浄な気配を纏ったその存在は現れた。
名をミカエル。かつて東京ブリーチャーズが邂逅した十字教における大天使である。
続き23行
126:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:53:07
>「ええっ!? そんなことやってんの!? それって人間にとっても危険なことなんじゃ……」

「人造の聖騎士……笑えねぇ話だな。狂信者ってヤツは箍が外れてるのが相場だが、仮にも天使が率先して狂気に奔るなんざ――――そこまで堕ちたかよ。十字教」

ねめつけるようにそう吐き捨てる尾弐。
さもありなん。命の創造、生命の操作。
それは、遠い昔……世界が未だ神の世に在った頃の御業であり、遺物だ。
なればこそ、神から人へと世界が引き継がれたこの世界でその御業の行使が許される筈も無い。
人間という種の命を人間が改竄改編するという事は、それ即ち人による人の可能性の否定に他ならないからだ。

>「うん。とりわけ、ここにいる君たち四人は全員が紛れもない、人に仇なす妖壊たちだ。わたしの討伐対象以外の何物でもない」
>「だから……だから、ね。君たちには、ここで死んでもらうしかないのさ」

なれば眼前のこの男は、神の奇跡の再現にして、人類という種への冒涜に他ならない。
既に人としての身を喪っている尾弐であるが、人類の業というものを改めて思い知らされ、その首筋に一筋の冷や汗が流れる。されど

>「ミスターも。借りがあると言うのなら、今ここで返してもらおう。死んでくれるかい?」
>「そう……そうだ。レディのために、わたしは君たちを葬る。その必要がある」
>「死にたくなければ抗うことだ。でなければ、君たちは――」
>「何も成し遂げられずに、この物語を終えるしかない!!」続き9行
127:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:53:48
那須野とポチ。己が仲間を眼前の傷つけられた事へ怒りを押し殺しつつ、尾弐は拳を振るう。
酒呑童子という力の根源を失ったとはいえ、尾弐が1000年を生きた魔性である事に代わりは無い。
唸る様に空を裂くその剛腕は、例えるのであれば大嵐。
有象無象の妖魔は勿論、一般に名を知られている――程度の妖怪であれば、問答無用で血霧と化す威力を有している。
更に言えば、力が有るという事は、それ即ち相応の速さも有しているという事に他ならない。
高い威力を持つ迅雷の一撃。これを回避するのは容易い事では無い。

>「君たち妖壊(バケモノ)の天敵とは何か知ってるかい?それは――人間だよ」
>「ミスターの攻撃は大振りすぎる。こうして攻撃の『起こり』さえ察知できれば、中断させることは容易い」
>「もっと小細工を利かせる必要があるかな!君は元は人間だったのだから、創意工夫は得意なはずだよ!」
>「それから。肉を切らせて骨を断つ戦法は避けるべきだ――相手が君の予想だにしない技を持っている場合もある。このように!」

されど、聖騎士ローランの名を冠する男は、尾弐の人外の一撃を容易く上回る。
彼は放った打撃を息を切らす事無く回避し、更には打撃を放つ前に剣を以って起点を潰すという妙技までこなしてみせた。

「しゃらくせぇ、そんな飯事みてぇな攻撃が……な……っ!?」

加えて今撃ち放ったのは、僅か一発で尾弐を無力化する絶技。
顎先を打ち脳を揺らせば人型の生命を無力化出来るのは道理だが、果たして重戦車の様に荒れ狂う相手にそれを実行出来る存在がどれだけいるだろうか。
続き24行
128:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:54:18
>「……せっかく、皆さんの呼びかけで前向きに生きようって。やり直そうって思ったのに。いきなり出てきて、死ねですって?」
>「一度生きると決めたんだ!その決意は、どんな困難や逆境があったって覆せやしない!」
>「アナタにとって、ボクたちは滅ぼす対象でしかないかもしれない――。けれど、ボクたちも生きていたい理由がある!」
>「それを不当に奪うことは、侵略と変わりない!アナタの攻撃対象である妖壊たちと、何も変わりなんてないんだ!」
>「見せてあげますよ、ボクたちの力を。東京ブリーチャーズの力を!」
>「ノエルさん、クロオさん、ポチさん!もう一度だけ気張ってください――ここが正念場です!」
>「この『妖怪の天敵』を……返り討ちにしてあげましょう!」

>「よく言った……! 僕は多様性を認めない奴は大っ嫌いなんだーっ!
>全てを白か黒かで分けるなんて……そんなの間違ってる!」

「――――別にな、俺はお前さんがどう正義ってヤツを振り回そうとどうでも良いんだ。独善結構、一神教結構。俺の知らねぇ所で好きにやってくれ」
「けどな……テメェは、那須野橘音を傷付けた。俺が惚れた女を傷つけた」
「そいつぁダメだ。例えどこぞの聖典が赦しても。清廉なる神サマが賞賛したとしても――――この俺だけは許さねぇ」

嗤う。尾弐黒雄は嗤う。
妖壊の天敵。歴史に名を刻む大英雄を根源とする正義を前にして。
正義が押し付けてくる恐怖を、不安を、苦痛を、怯えを。
己に絡みつくそれら全てを嗤って叩き伏せる。
続き9行
129:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:55:04
十重二重の剣戟と、反撃の猛打。
絶命に至る選択肢を幾度も繰り返し、されど東京ブリーチャーズは崩れない。
個としては及ばぬ性能を連携により補い、強靭なる聖騎士へと食い下がる。
互いに絶死の可能性を孕んだ状態で膠着する戦況。
されど、それを良しとせぬ英雄(ローラン)は一つのカードを切る。

>「では……わたしも奥義を出すとしよう。これを凌げれば本物だ、君たちに出来るかな?」
>「――1と3より成る聖遺物よ、神の徴よ。今こそ其の奇蹟を諸人に顕さん。主の前にまつろわぬ、総ての敵を討ち滅ぼせ――」
>「――悉皆斬断。『不抜にして不滅の刃(インヴィンシヴル・デュランダル)』!!!」

>「来ますよ……皆さん!」


即ち、彼が手にする聖剣デュランダル。その神髄の解放である。
神威を孕んだ聖なる光の本流。
そうあれかしの元に『正義』を束ねたその一撃を僅かでも受けてしまえば、尾弐の様な悪は滅び去るしかない。けれど

「――――悪ぃが、俺達は当たれば死ぬなんて状況は腐る程体験してんだ」

>「お母さん、カイ、ゲルダ、力を貸して――!」続き14行
130:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/08/30(金) 22:59:36
呪詛に染まった悪鬼の血は、人間にとっての猛毒だ。
されど――――毒すらも薬へと変えてきたのが人の業。
知識有る者にとって、悪鬼の血はとある術式の最高の素材と成り得るのだ。

そして、遠き日に僧侶であった尾弐は、その知識を未だに有している。
最も原始的で、血なまぐさく野蛮な呪法。人という生物が人間へと成る過程。その原初に生み出した、呪い。
尾弐の魂に僅かに残っていた酒呑童子の反転術式の残骸。それを素材として生み出す、悪鬼・尾弐黒雄の固有術。


「――――始原呪術【復讐鬼】」


相手に己の苦痛を返す。至極単純にして、強力な呪い。

尾弐の掌に有った血まみれのガラスが尾弐の妖気によって変質し、赤く透明な鎖と化していく。
尾弐の左手から伸びる真紅の鎖はやがて蛇の様に蠢くと、定めた対象の腕を巻き取ろうとする。
その相手の名は―――――

「あの聖騎士サマには呪いなんざ通用する筈がねぇ――――だから、すまねぇな橘音。ちっとばかし俺に呪われてくれ」
続き25行
131:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/03(火) 18:57:42
>「ありがとう、ミスター。でも、ここで帰るわけにはいかない。わたしも子どもの使いで来ているわけではないんだ」
>「時間がない……ここでやっておかなければ、きっともう二度とできないことだからね」

尾弐の勧告を、Rは聞き入れなかった。

>「ところで、イノリちゃんはいないのかい?別の天魔を倒しに行った?……そうか、それは益々都合がいい」
>「彼女に、仲間の死を見せるわけにはいかないからね……君たちは『いつのまにか滅ぼされていた』というのがいい」

瞬間、ポチの全身を漆黒の毛並みが走る。
獣人形態――被毛の鎧と、自在に動く人の手足を兼ね備えた、完全な戦闘態勢。

>「君たちを始末させてもらうよ。遠慮はしない、冗談でもない。死にたくなければ、全員でかかってくることだね」

だが――ポチは戦闘態勢を取っていながら、動かない。
動けない――どう仕掛けても、それが上手くいくヴィジョンが見えないのだ。

>「どうしたのかな?来ないなら、わたしから行くよ?3分くらいで片付けられるといいなあ!」

Rが一歩前へと踏み出す――ポチは酔醒籠釣瓶を握る右手に力を込めた。
続き48行
132:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/03(火) 18:58:39
>「うん。とりわけ、ここにいる君たち四人は全員が紛れもない、人に仇なす妖壊たちだ。わたしの討伐対象以外の何物でもない」
>「だから……だから、ね。君たちには、ここで死んでもらうしかないのさ」

結局のところ、ローランはブリーチャーズを殺そうとしている。
それは変わらない。

>「レディのためにと言ったね、ノエル君。だが、これもまたレディのための行為だと言ったらどうかな?」
>「ミスターも。借りがあると言うのなら、今ここで返してもらおう。死んでくれるかい?」
>「ポチ君は。この中では一番賢明かもしれないな……。わたしが本気だということを、もうにおいで理解しているのだろう?」
>「アスタロト。君はもう言うまでもないな……天魔は殺す。かつて神に弓引いた君を、わたしは一番に滅ぼさねばならない」

ポチは答えない。ほんの僅かな呼吸の乱れさえ、生みたくはなかった。

>「そう……そうだ。レディのために、わたしは君たちを葬る。その必要がある」
>「死にたくなければ抗うことだ。でなければ、君たちは――」
>「何も成し遂げられずに、この物語を終えるしかない!!」

そして――ローランが地を蹴った。
瞬時に橘音へと間合いを詰め、その顔面を――鞘に収めたままの十字剣で殴りつける。
続き39行
133:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/03(火) 19:00:08
>「ポチ君。彼女を――将来を誓い合った相手を守りたいのだろう。これから戦う相手は、真っ先に君の大切なものを狙うよ」

ローランの言葉に、ポチは何も答えなかった。
ただ――考えていた。
ローランは、場違いなお節介を言っているだけなのか。
それとも「今からそうする」と宣言しているのか。
もし後者なら、自分には何が出来るか――何をすべきか。

そうしている間にも、戦況は動き続ける。
ローランが聖剣を、鞘から抜いた。
そしてその鞘を地面へと打ち捨てる。

>「これはもう必要ない。今までは手加減してきたが……これからは本気だ。本気で、君たちを斬る」
 「聖剣デュランダルの力は、猿夢のときに見たはずだ。触れれば、斬られれば、君たちは滅びる。死でさえない、真の滅びだ」
 「それが嫌なら――わたしを斃してみせろ!!」

ローランが吼える――まるでブリーチャーズを鼓舞するかのように。

>「……せっかく、皆さんの呼びかけで前向きに生きようって。やり直そうって思ったのに。いきなり出てきて、死ねですって?」
 「バカ言ってもらっちゃ困りますね……。確かに、アナタには何度も助けられた。恩人と言ってもいい」続き42行
134:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/03(火) 19:05:42
>「祈ちゃんがいないのは残念ですが……久しぶりに行きますよ!」

「侵略――ああ、そうか。それでいいのか」

そして――ポチは何かに気が付いたように小さく呟くと、

「「「「――東京ブリーチャーズ!アッセンブル!!」」」」

牙を剥くように笑みを浮かべて、そう叫んだ。

>「ははッ!それはいい!実に……いいね、カッコイイよ!」

ローランが地を蹴る。解き放たれた聖剣が尾弐へと迫る。
だがその直前、ポチもまた前へと踏み出していた。
狙うは――ローランの脚。
爪が通らずともいい。噛み付く事が出来なくともいい。
ただ足元に潜り込んで、その踏み込みを阻む。
更にノエルが吹雪と氷壁を展開すれば――いかにローランと言えど、尾弐まで刃を届ける事は出来ない。

>「……ち……!」続き52行
135:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/03(火) 19:10:35
同時に、その全身から宵闇が溢れる。
周囲を己の縄張りと定める事で、送り狼の住処――夜闇を生み出す妖術だ。
どこに誰がいるかも分からない。分からないから、いない。
いないのだから、傷つけようもない――送り狼の、結界。
それがポチを包むように、ブリーチャーズを包むように広がっていく。

「シロだけじゃない――あいつは、僕の世界を踏み荒らしたんだ」

そして――夜闇は、止まらない。更に外へと広がっていく。
気を失って倒れたままのシロへ、陰陽師達へ、芦屋易子へ、天邪鬼にまで、夜闇は届いた。

かつて、ポチは孤独な妖怪だった。
狼に憧れながらも、狼でない者達の群れに身を置いていた。
仲間を愛しているかのように振る舞いながら、その実、皆の為に心底必死になれずにいた。

それがシロと出会い、ロボと出会い、変わった。
同胞を得た。仲間を思いやる心の余裕を得た。
芦屋易子と出会って、その愛の深さに強い共感を覚えた。
陰陽師――混じり気なしの人間である彼らにも、狼と変わらぬ絆を見出し、そこに尊さを感じた。
続き40行
136:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:30:04
聖剣『デュランダル』。
柄に四つの聖遺物を封入したその十字剣は、古くはトロイア戦争の頃から多くの魔物・妖壊を斬滅してきた。
こと怪異殺しという意味では、橘音の持つ天下五剣の一振り童子切安綱よりも遥かに歴史が長い。
そんな魔滅の聖剣から迸る、祝福のエネルギー。奥義『不抜にして不滅の刃(インヴィンシヴル・デュランダル)』。
解き放たれた聖光は妖怪にとって致命的な滅びを齎し、魔神や魔王といった大妖クラスさえ抗うすべはない――
本来ならば。

>お母さん、カイ、ゲルダ、力を貸して――!

ノエルが聖光に抗うように多面体の盾を展開する。
それはただ単に光を受け止めるだけの強固な防壁ではなく、束ねられた光を分散させる氷のプリズムだった。
プリズムに激突した破壊の聖光が、幾重にも反射してやがて威力を弱め、消えてゆく。

「なにッ!?」

ローランは瞠目した。それはいつも余裕を崩すことのなかった聖騎士の、初めての動揺かもしれなかった。
巨大な猿夢の本体を稲穂を狩るように造作なく屠り、衛星レーザーさえ無傷で凌いだ姦姦蛇羅の身体に大穴を開けた聖剣の一撃。
それを、まさかこんな方法で凌がれるとは。

「はは……驚いたな!でも、悪あがきだノエル君!妖壊殺しの聖剣は――そんなに甘いものじゃない!」続き50行
137:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:30:23
「ぁ……」

尾弐から伸びた長く紅い鎖が、するすると橘音の左腕に絡みつく。
突然のことに橘音は一瞬戸惑ったが、次に尾弐が発した言葉を聞いてその意図をすべて察した。

>お前の痛みを、背負わせてくれ

「……そういうことですか。まったくクロオさんってば、いつも無茶なことばっかりするんですから」

呆れたように笑う。呪詛とは基本的に『自分の痛みを他者に味わわせる』ものだが、尾弐の狙いは本来のものとは真逆であった。
すなわち、自分が痛みを肩代わりすることで、橘音が天魔の力を使うためのリミッターを外させようとしている。
これで、橘音は尾弐の呪術が有効な間天魔アスタロトとしての強大な力を思う存分行使することができる。
言うまでもなく、これは大変に危険な行為だ。上級天魔の力はその権能の行使と引き換えに莫大な痛みを強いる。
魂の世界では橘音は誰憚ることなくその力を使っていたが、現実世界では勝手が全く異なる。
姦姦蛇羅との戦いでその力の一部を使った時は、ほんの僅かな時間だったというのに橘音は暴走を起こしそうになった。
その巨大すぎる力と痛みを尾弐が代わりに請け負う――それは相当な負担であろう。
かつての橘音であったなら、そんなことはさせられませんと取り付く島もなく却下していたかもしれない。
……しかし、今の橘音は違う。
尾弐に対してずっと胸に秘めていた想いを打ち明けて。受け入れられて。
お互いの傷も罪も、何もかも分かり合った本当のパートナーとなった橘音なのだ。続き43行
138:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:30:37
「はあああッ!」

戦いのさなか、橘音がローランへ左手を突き出す。広げた手のひらの前方に魔法陣が現れ、そこから無数の蝙蝠が飛び出してくる。
しかし、ローランはまったく慌てない。児戯とばかりに聖剣でその悉くを叩き落とす。

「そんな目くらましでは、わたしを欺くことなんてできないよ……アスタロト!」

「ならば――これでどうです!」

カッ!!

半面の奥の橘音の双眸が妖しく輝く。
天魔の権能を全開にしているため、橘音の瞳術も普段とは比較にならないほど強力になっている。
魂の世界で橘音が変貌していた巨大怪異に匹敵――いや、それをも凌駕するような閃光が、一瞬ストロボのように煌めく。
だが、それさえも。ローランにとっては脅威と認識すべきレベルではないらしい。

「甘い!」

聖剣を一閃する。――太陽の光のような輝きが、剣によって寸断される。
光をも断つ、恐るべきは聖騎士ローランの剣術。聖剣デュランダルの切れ味。続き45行
139:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:30:49
ローランは束の間、目を閉じた。
その直後、首筋に感じた強烈な殺気に対して聖剣を瞬時に突き出す。

ガギィンッ!!

硬い音を立て、聖剣とポチの牙とがぶつかり合う。

「く……、ぅ……ッ!」

間一髪で首筋を食い破られるのを阻止する。ローランはすぐに聖剣を振るい、大きく後方に退いた。
それからすぐに激しい光を放つ剣先を振るい、ポチの作り出した結界を切り裂いて脱出する。
ポチの『王国』が徐々に薄れてゆき、構築した結界が消えてゆく。
東京ブリーチャーズの四人と聖騎士は、ふたたび距離を置いて対峙した。

「なるほど……。君たちは、わたしの想像をはるかに超えて強くなっていたようだね」

剣を下ろし、ローランは静かに言った。そして、左手で左の首筋に触れる。
触れた首筋は、べったりと血に染まっていた。すんでのところで致命傷は免れたが、ポチの牙は確かに届いていたのだ。
ローランは左手についた自身の血をまじまじと見つめると、小さく笑った。
続き41行
140:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:31:29
「はっはっはっ!でも、確かにそうだ!わたしとしたことが、ほんのちょっと熱くなってしまったらしい!」
「ミカエルの言うとおりだ。わたしには、やらなければならないことがある。それを優先しなければね」

足元のシャツとパーカーを拾い上げ、素早く着直すと、ローランは聖剣を鞘に収めた。もう戦いは終わりということらしい。

「君たちの強さは見せてもらった。これなら安心か……もし、最悪の事態が訪れたとしても。君たちなら乗り越えられるはずだ」
「……ということで!ご褒美と言ってはなんだけど、君たちにとっておきの情報をあげよう!」

「とっておきの情報……?」

アスタロトから元の狐面探偵の姿に戻り、尾弐の呪法から解放された橘音が怪訝な表情を浮かべる。
ローランは一度頷いた。

「そうさ。君たちの宿敵、東京ドミネーターズ。その首魁である赤マントの居場所だ」

「……それは」

唐突に齎された情報に、橘音は思わずぶるり、と全身を震わせた。
ノエルや尾弐、ポチにとっては初見の情報だろう。だが、橘音はそれを知っていた。
なぜなら、ブリーチャーズを裏切りアスタロトとして活動していた頃、自分もまたその場にいたからである。続き50行
141:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/07(土) 13:33:42
「ローランだと?まさか、アースライト・ファウンデーションの聖騎士ローランか?」

ローランが去って数時間後、ようやく息を吹き返した天邪鬼が目を見開く。
ミカエルが小さく頷く。

「今まで黙っていてすまない。だが、我々にも事情があるのだ。許してほしい」

「失敗作として廃棄処分されたと聞いていたが、まさか貴様が脱走させていたとは。更迭ものの不祥事だな、天使長?」
「まぁ、貴様らの目的は十字教徒以外の殲滅であるし?この状況は想定通り、といったところか?」
「神妙な顔などするな、演技だというのはお見通しだ。そら……開き直って嗤ったらどうだ?」

「………………」

手痛い敗北を喫した意趣返しとでも言うのか、天邪鬼がミカエルへ痛烈な皮肉をぶつける。

「……すまない」

天軍を指揮する天界のナンバー3、最も高貴な天使の一翼は、そう言って東京ブリーチャーズに深く頭を下げた。

「何を言ったところで、私の犯した罪とローランの成したことが正当化されるわけではない。批判は甘んじて受ける」続き46行
142:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/11(水) 00:58:50
「気にしないでやってくれ。あの二人は付き合い始めたばかりのものでな」

氷の盾が融解しはじめたにも拘わらず、軽口を叩く深雪。
背後でお惚気大会と見せかけつつローランに対抗するための準備が着々と進みつつあるからだ。

>「あの聖騎士サマには呪いなんざ通用する筈がねぇ――――だから、すまねぇな橘音。ちっとばかし俺に呪われてくれ」

>「行きますよ、クロオさん!」

氷の盾が突破される直前、アスタロトへと姿を変えた橘音がローランに大鎌で切りかかる。
それにより、ローランは聖光の攻撃の中断を余儀なくされた。

「交代だ、バカップル!」

そう叫んだ深雪は、元の手に収まるサイズの氷の塊に戻った理性の氷パズルをキャッチし、後ろに下がる。

「橘音くん、かっこいい!」

深雪はノエルの姿に戻ると、呑気に橘音を応援している。
援護に回ろうにも、すでに聖光の防御で全ての妖力を使い果たしたということだろう。続き25行
143:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/11(水) 00:59:53
>「ここからが、本気の本気だ」

「裸で何が悪い、服なんて飾りです、偉い人にはそれが分からんのですってか!?
全世界ヌーディストビーチ化したいという君の主張はよく分かった! 分かったから落ち着いて話し合おう!
何なら僕も脱いで裸で語り合ってもいい! 性別は君の好きな方に合わせる!」

大慌てで戦闘続行を止めにかかるノエル。慌て過ぎて言っている事は意味不明だが。
ノエルは妖力を使い果たし、大技を使った橘音やポチも似たようなものだろう。
橘音の負担を肩代わりした尾弐はダメージが半端ないはずだ。
ここで再度、ミカエルが止めに入る。

>「もうやめろ!ローラン!」
>「そんなことをするために!この者たちと戦うために、貴様はE.L.Fを出奔したのか!?違うだろう!」
>「我ら天使の庇護下では出来ないことをするために!叶えられない夢を叶えるために!貴様はヴァチカンを去ったのではないのか!」
>「貴様の出奔を見逃したのは私だ!見て見ぬふりをしたんだ、私は!天使長として許されないと分かっていながら……」
>「ローラン、クローンでありデザイナーベビーである貴様の命は――ぐぁっ!」
>「余計なことは言うな、と言ったぞ。ミカエル」

言ってはいけないことを言いかけたらしいミカエルがまるで口封じのようにローランに吹き飛ばされる。
クローンでデザイナーベビーだから命がなんだというだろう。続き24行
144:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/11(水) 01:00:49
「もしかして君……赤マントの計画を阻止するために敢えてドミネーターズに身を置いてるんじゃない? そうなんでしょ!?」

ノエルの問いかけには答えず、ローランは3か月後が決戦の時だと告げる。
そして、一行と共に戦うべきだというミカエルの勧めを拒絶した。

>「天邪鬼君やシロ君、陰陽寮の人々には謝っておいてほしい。手段を選んでいられなかったとはいえ、酷いことをした」
>「それじゃ、わたしは行くよ。三ヶ月……いいね。あと三ヶ月のうちに、出来る最善のことをするんだ」
>「でなければ……すべてが滅ぶ。君たち自身も、君たちの大切な人たちも。すべてが死ぬことになるだろう」

「ちょっと待って、一人でどこに行くの!?」

後を追おうとするノエルの方を、聖騎士は軽く振り向く。

>「……ノエル君、君は純白の世界よりもカラフルな世界の方が好きだ――と言ったね」
>「わたしも、カラフルな世界の方が好きだよ」

「あ……」

やはり、最初の口上の白か黒かの世界は嘘だった。こっちが本心だ、と直感的に悟った。
追いかけようとするのをやめ、その代わり背中に向かって謎の営業トークを繰り出した。続き20行
145:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/11(水) 01:01:30
>「ローランだと?まさか、アースライト・ファウンデーションの聖騎士ローランか?」

しばらく天邪鬼が容赦なく皮肉をぶつけ、ミカエルが平謝りしていたが、橘音が話を進める。

>「確かにローランによって手痛いダメージは受けましたが、幸いボクたちも陰陽寮の人たちも死んでいません」
>「今はそれでよしとしましょう。それに……彼は彼で、何らかの目的があって動いているようですしね」
>「敵の敵は味方……というわけではないですが、彼のことは今はいいでしょう」
>「それより、彼の言っていた言葉の方が重大です。あと三ヶ月……たった三ヶ月で、天魔の計画の最終工程が完了する」
>「ボクたちは、限られた時間でそれを食い止めるための方策を考え出さなければなりません」

「そうだった、銃刀法違反の変質者のことを気にしてる場合じゃない……!」

>「どうやら、すべてをお話しする時が来たようです」
>「皆さんにお伝えしましょう。ボクがアスタロトとしてあちら側にいたときに得た情報を」
>「天魔が。……あの男が何を企んでいるのかを、ね」

>「ならば、陰陽頭さまにもご同席を。日ノ本の守護機関として、我々もそれを聞いておく必要がありますゆえ」

「なんか大変なことになってきた……」
続き20行
146:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/15(日) 22:19:01
等活地獄
黒縄地獄
衆合地獄
叫喚地獄
大叫喚地獄
焦熱地獄
大焦熱地獄
無間地獄

合わせて称するは、八大地獄及び壱六小地獄。
即ち、其れ等は仏教における終着の一つである。
『罪人に相応しい末路がありますように』という無力な善人達の祈りにより生まれた苦痛の極致は凄まじく、
真っ当に生きる人間であれば、生きている内にそれらを凌駕する苦痛を味わう事は不可能であると言えよう。

「……っ!」

しかし――――尾弐黒雄が味わっている苦痛は、それらの地獄を凌駕する。
例えるのであれば、自身を構成する全てが壊死した後に、言葉も発せぬ程の激痛を伴って強制的な復元をし、そしてそれが延々と繰り返される感覚。
与えられる感覚は、焼かれるよりも尚熱く、凍えるよりも尚冷たく。
まるで、全身の神経を引き抜かれてゆっくり鑢に掛けられているような。続き17行
147:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/15(日) 22:20:41
>「クロちゃん、キツかったら僕も呪ってくれていいから。反転させない方でね」
「あんがとよ……けどな、色男。苦しいから、キツイから――――だから、俺はまだ立っていられるんだ」

――――されど。先の弐つは理由の『おまけ』に過ぎない。
最後の一つ。これ程の苦痛に耐え抜く事が出来る究極の理由。尾弐の過去は、ただ一つ。

>「行きますよ、クロオさん!」
「ああ。全力で行ってこい橘音。無理と無茶は、俺が引き受けた」

尾弐黒雄が、那須野橘音という女に惚れたから。
惚れた女を守れるのであれば――――尾弐黒雄は、どんな苦痛を前にしても決して倒れない。
痛み(キズナ)が尾弐を強くする。

尾弐は腕を組み、その凶暴な瞳で真っ直ぐに眼前の戦いを見つめる。


>「そうですとも。クロオさんが言ったばかりでしょう?『自分にできないことなら、仲間に頼めばいい』んですよ――」
>「ボクがアナタに勝つ必要なんてない。ボクはただ、バトンを渡せばいいだけです。アナタに勝ってくれる仲間にね!」
>そうさ、シロだけじゃない。みんな、僕のものだ。ここは――『僕の縄張り』だ
>「――影狼怨舞」続き11行
148:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/15(日) 22:21:37
>「ローランだと?まさか、アースライト・ファウンデーションの聖騎士ローランか?」
「そこまで詳しくは知らねぇが、聖人や英雄の類であるのは間違いねぇだろうよ」

意識を取り戻した天邪鬼。その言葉に、尾弐は床で胡坐をかいた姿勢のままで肯定の意を返す。
無作法であるが……しかし、それも仕方ないといえよう。
表情にこそ出してはいないものの、アスタロトとしての負荷を請け負う事は相応に負担が大きかったのだ。
命に係わる事はないとはいえ、体力は大きく削られており、座って話をするのが精一杯。
疲れから眠りこけてしまっていないのは、ローランに勝ち逃げされた事に対しての、せめてもの意地という奴だろう。

そう――――結局、東京ブリーチャーズの一行はローランを打ち破る事は叶わなかった。
英雄に相応しい力を持つ男に対し、一太刀を浴びせてみせた事は偉業といえるだろうが、それでも『それだけ』だったのだ。

>「わたしも、カラフルな世界の方が好きだよ」

天邪鬼とミカエルのやり取りを聞きつつ、尾弐はローランの去り際の微笑を思い返す。

(……あの野郎は、まだ余裕があった。初めから本気で掛かられてたら、鎧袖一触にやられてたって訳だ)

ローランの語った言葉から、彼が単なる敵対者ではない事は判った。
それなりの事情が有った事も察する事は出来た。だからこそ続き18行
149:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/15(日) 22:22:20
>「どうやら、すべてをお話しする時が来たようです」
>「皆さんにお伝えしましょう。ボクがアスタロトとしてあちら側にいたときに得た情報を」
>「天魔が。……あの男が何を企んでいるのかを、ね」
>「なんか大変なことになってきた……」

「は!?……おいおい。何時もの事ながら、欲しい情報を欲しい所で持ってきてくれるじゃねぇか」

那須野の口より齎された突然の吉報に、思わず驚愕の声を出す尾弐。そう、懸念すべき事項の一つである、天魔の目的は那須野橘音が知っていたのだ。
だが、それは当然――――といえば、当然なのだろう。
天魔が動き出したのは遥か昔から。なれば、一時とはいえ彼らに属していたアスタロトが彼等の目的を知っているのは自然であると言えよう。

>「ならば、陰陽頭さまにもご同席を。日ノ本の守護機関として、我々もそれを聞いておく必要がありますゆえ」
>「祈ちゃんが戻ってきたら始めましょう。少し長くなりますが……頑張って耳を傾けていてください」
>「なるほど、よく分かんないけど世界が危険で危ないんだな」

急遽開催される事となった人、妖、天使による会合。
別の天魔を対処しに赴いた祈が帰還し次第始まるであろうソレを目前に控える事となった尾弐は、不意にある事に気付き口を開く。

「あー……なあ、芦屋の当代。悪ぃんだが、全員分の正装貸しちゃくれねぇか。お偉いさんたちの集まりにでるのにこの服だと……なぁ?」
続き21行
150:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/19(木) 19:52:12
獲物の首筋をあぎとに収め、喰らいつく。
その瞬間まで、ポチはこの世のどこにも存在しない。
故に、気取る事など出来るはずがない。
故に、躱す事など、防ぐ事など出来るはずがない――はずが、なかった。

>「く……、ぅ……ッ!」

しかしローランはそれを躱して、防いでのけた。
聴覚か、嗅覚か、それとも第六感か。
ポチの牙がこの世に現れて、閉じ切る前に身を躱し、更に聖剣による迎撃を合わせた。
いかに狼王の牙と言えど、聖剣との打ち合いに勝ち目はない。
即座に姿を消して、退かざるを得なかった。
その隙に、ローランが夜闇の結界を切り裂いた。

>「なるほど……。君たちは、わたしの想像をはるかに超えて強くなっていたようだね」
>「生まれて初めて、手傷というものを負ったよ」

ローランの首筋からは手のひらでは拭い切れないほどの出血が見られた。
だが――致命傷とは到底言えない。
戦いは、まだ終わらないという事だ。続き21行
151:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/19(木) 19:52:37
>「もうやめろ!ローラン!」

だが、戦いは突然終わりを告げた。
ミカエルの制止を受けたローランが、紆余曲折を経つつも聖剣を鞘に収める。

>「君たちの強さは見せてもらった。これなら安心か……もし、最悪の事態が訪れたとしても。君たちなら乗り越えられるはずだ」
>「……ということで!ご褒美と言ってはなんだけど、君たちにとっておきの情報をあげよう!」
>「とっておきの情報……?」

ローランの変わり身の早さに、ポチは大して驚きもしなかった。
彼の殺意は本物だったが――その行動と言動には無駄があった。
ただ獲物を狩るだけならば不要な、何かを伝えようとする意志が。

>「そうさ。君たちの宿敵、東京ドミネーターズ。その首魁である赤マントの居場所だ」
>「……それは」
>「アスタロトは知っていて当然か。……東京都庁。そこが東京ドミネーターズの、天魔の本拠地だ」

東京都庁が一体いかなる場所なのか、ポチには分からない。
だがなんとなく、東京の要所である事は理解出来た。
同時に、アスタロトがスカイツリーを酒呑童子の復活に利用していた事を思い出す。続き16行
152:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/19(木) 19:53:12
>「ローランだと?まさか、アースライト・ファウンデーションの聖騎士ローランか?」

それから数時間後、天邪鬼はようやく意識を取り戻した。
変化を解いた状態でシロの傍らに伏せていたポチが、上体を起こす。
人の姿を取っていないのは、体力の回復を少しでも早める為だ。

「うん、確かに聖騎士ローランって言ってたよ」

>「今まで黙っていてすまない。だが、我々にも事情があるのだ。許してほしい」
>「失敗作として廃棄処分されたと聞いていたが、まさか貴様が脱走させていたとは。更迭ものの不祥事だな、天使長?」

「廃棄処分?……作るだけじゃなくて、殺すとこまで自分らでやってるのか?
 そりゃ……ローランもあんたをぶっ飛ばす訳だよ。
 しかし、参ったな。次あいつと会う時、恨み言が言いにくくなっちゃった」

 「まぁ、貴様らの目的は十字教徒以外の殲滅であるし?この状況は想定通り、といったところか?」
 「神妙な顔などするな、演技だというのはお見通しだ。そら……開き直って嗤ったらどうだ?」

「……まぁ、仕返しはしといてやったからさ。それくらいにしときなよ」
続き30行
153:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/09/19(木) 19:53:22
それからややあって、天魔を漂白した祈が帰ってきた。

>「お疲れさん。怪我はねぇか、祈の嬢ちゃん。戻って早々で悪ぃんだが、色々と事態がが動いてな。実は……」

>「そっちは大丈夫だった!? 橘音くん生き返ったよ!
>でもね……再会のモフモフはもうちょっと後にしてあげてね。
>突然だけど橘音くんから大事な話があるんだって」

>「……ま、そういう訳だ」

かくして、東京防衛の要となる人物が一堂に会した。

>「……準備はよろしいですか?では、始めましょう――」

そして、那須野橘音が口を開く――
154:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/23(月) 20:45:19
安倍晴朧の私室は邸内の最も奥まった場所にあり、厳重に人払いすれば室内の密議が外部に漏れる心配はない。
多甫祈が帰還し、それぞれ着替えたりシャワーを浴びるなどして居住まいを正すと、一行は極秘の会談を行った。
東京ドミネーターズ、天魔七十二将――そして怪人赤マントが、この帝都で何を計画しているのか。
そのすべてを詳らかにする会議である。

「まず……話の核心に触れる前に、皆さんには一柱の天使の話をしなければなりません」

いつもの学生服姿、天魔アスタロトから狐面探偵に戻った橘音が、低く抑えた声音で全員に向けて告げる。
半狐面に覆われたその表情は、心なしかいつもより緊張しているように見える。
それだけ、これから語る内容は橘音にとっても秘中の秘、この一連の戦いの核心ともいえる話なのだろう。
安倍晴朧はじめ芦屋易子、天邪鬼、シロらも一様に表情を強張らせている。だが――
橘音のそんな前振りに対して一番悲壮な表情を浮かべているのは、天使長ミカエルだった。

「皆さんは、十字教のいわゆる唯一神が『最初に創造した』天使は誰だか、ご存じですか?」

まるでクイズでも出すように、橘音はぐるりと居合わせる一同の顔を見る。

「ルシファーさん?ミカエルさん?それともメタトロン?――どれも違います。『彼』に比べれば、その三柱はどれも新参に過ぎません」
「ともあれ――その『最初の天使』は神の右腕として創造された。神の補佐として、世界を創り。天国を造り。天軍を作った」
「その力は神に次いで強大無比。炎を纏い天の戦車を駆るその姿の美しさは、比肩する者なく……」続き53行
155:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/23(月) 20:45:59
「しかし、そこで歯車が狂った。――いや、本当に『そこ』で狂ったのかはわかりません。ひょっとしたらもっと前からなのかも」
「サタンは忠実に職務を履行しました。神に言われたとおりに人々を誘惑し、堕落させ、殺戮した」
「人間たちは軒並み悪徳に耽溺しました。飽食し、驕慢し、憤怒し、色欲し、怠惰し、強欲し、嫉妬した」
「そう――」
「それは、神の想像さえ上回るほどに、ね……」

サタンの手並みは完璧だった。否、完璧すぎた。
サタンによって堕落させられた人々の数は数えきれず、まるで火のついた藁が燃えるように世界には悪が蔓延していった。
神がいくら天使たちを差し向け、改宗と善性の維持を啓蒙しても、まるで追いつかないほどに。

「このままでは、世界は悪で満たされてしまう。そうなってしまえば、もう支配領域を広げるどころではありません」
「神は訝しみました。『ひょっとしたら、サタンは自分自身も悪徳に染まってしまったのでは?』と」
「だから――神はサタンを天界に呼び戻すと、その力を。サタンのみならず、神の長子としての権能までも奪い取ったのです」

「サタンの撒く悪逆が信仰を上回れば、或いはサタンが自分を上回る力を得るやも、と神は危惧したのであろう」

橘音がいったん口を閉じると、代わりに天邪鬼が感想を漏らす。

「権力闘争とは、どこの世界にもあるものですね……」
続き44行
156:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/23(月) 20:46:15
天魔ベリアル。
序列68位、50の軍団を率いる地獄の大王。
だが、この序列は単にルシファーの陣営に名を連ねたのが遅かったというだけで、彼の力の指標とはなりえない。
それよりも。
ベリアルといえば、古今東西どの魔導書を紐解いても必ず名前が出てくる大物であろう。
曰く、地獄で最も低俗な、悪徳の為に悪徳に耽溺する精神の持ち主。
曰く、外見は荘厳華麗にして優雅端麗、権威に満ちるものの、その魂はきわめて醜悪。
曰く、天から落ちた天使のなかで、彼ほど淫らで不埒な者はいない――。

むろん、ベリアルは古巣で発行された書物であるところの聖書でもこれでもかと口汚く罵られている。
実際ベリアルは神に祝福された人間由来の『神の子』であるイエス・キリストを逆告発するという離れ業を実行している。
また、天魔七十二将がバビロニアのソロモン王に使役された際、ソロモン王の死と共に他の天魔はみな行方を晦ませた――が。
ベリアルだけはソロモン王の死後もバビロニアに偽神として残り続け、人々を大いに惑わせたという。
まさに、人を破滅させることを生き甲斐とする悪魔の中の悪魔――と言っていいだろう。

「ベリアルはかつて神に奪われた力を取り戻そうとしています。オリンピックに合わせた帝都襲撃も、すべてはその目的のため」
「そう……。2020年に最盛期を迎える、皇居直下の龍脈のエネルギー。彼はそれを丸ごと手に入れようとしているのです」

皇居の真下は地球上でもきわめて珍しい、三本の龍脈が重なるレイライン・ポイントである。
龍脈が活性化するタイミングは普段ならそれぞれバラバラなのだが、2020年にはそれが一ヵ所に集まる。続き50行
157:
那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI2019/09/23(月) 20:52:25
「……当然、ベリアルもボクたちの襲撃は想定しているはずです。今すぐ都庁に攻め込んだとしても、返り討ちがオチでしょう」
「ボクが東京ブリーチャーズに復帰したことで、こうしてあっちの内情をバラすということも予想できるでしょうしね」
「実際、彼はボクが最後に出撃する際、誰かを地獄から新たに招聘しようとしていました。おそらく、強力な妖壊を」
「と、いうことで!皆さんには二ヶ月の間、みっちりと修行をして頂きます!」

橘音はやにわに立ち上がると、ビシィ!と東京ブリーチャーズ全員を指差した。

「てぐすね引いて待ち受けている、ベリアルとその仲間たちを退けられる力を手に入れるためのね!方法は各自お任せします!」
「ひとりでやるもよし!誰かとやるもよし!ただ、時間は限られています。たった二ヶ月の間で、最善の方法でお願いします!」
「陰陽頭さんは、万一の時のために全国の退魔機関や神社仏閣に連絡しておいてください。そうそう、政府にも根回しを」

「心得た」

「わたくしも有事に備えておきまする。退魔師たちを総動員し、天魔の襲撃にも対応できるよう人数を揃えましょう」

橘音の指示に、晴朧と易子が頷く。

「ミカエルさんはどうします?」

「……天軍は出せん。主は日本をさして重視してはおられない……。私がいくら天軍の総指揮官でも、無理だろう」続き55行
158:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/25(水) 01:01:29
>「今のベリアルなら、まだ倒すチャンスはある。逆に言えば、彼が力を取り戻してしまえばボクたちに勝ち目はありません」
>「こちらは二ヶ月……遅くとも二ヶ月半で対策を立て、準備を整え、その上でベリアルに先んじなければなりません」
>「彼らの準備が整う前に、こちらから都庁に攻め入りベリアルを討つ。それしか勝つ方法はないでしょう」

ノエルは橘音の話をしばらく黙って聞いていた。

「とりあえず一言でまとめるとカンスト仮面もといベリアルを倒せばいいということは分かった!
黒幕でサンタだかサタンだか出てきたらその時はその時ってことだな!」

あまりにもまとめすぎである。

>「……当然、ベリアルもボクたちの襲撃は想定しているはずです。今すぐ都庁に攻め込んだとしても、返り討ちがオチでしょう」
>「ボクが東京ブリーチャーズに復帰したことで、こうしてあっちの内情をバラすということも予想できるでしょうしね」
>「実際、彼はボクが最後に出撃する際、誰かを地獄から新たに招聘しようとしていました。おそらく、強力な妖壊を」
>「と、いうことで!皆さんには二ヶ月の間、みっちりと修行をして頂きます!」

「よしきた! 早速だけどどんな修行を!?」

橘音に釣られて立ち上がったノエルは、やる気満々で修行内容を尋ねる。
橘音のことだから、2か月でベリアル一味に勝てるようになる凄い作戦があるに違いない。続き24行
159:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/25(水) 01:02:49
「……分かってる。どうしても……行くんだよね。
せっかく苦労して生き返らせたんだから最終決戦前に修行で死ぬなんて笑えない冗談はやめてよね!」

橘音が行くと言ったら何を言っても無駄なのだ。尾弐はそれを誰よりも分かっているから最初から止めないのだろう。
祈は東京に残って颯やターボババアと修行するようだ。あとはノエルの修行先だが……

「僕は……雪山に帰ってみるよ」

普通に考えればそれしかないだろう。
雪の女王はノエルの扱う権能に最も近しい能力の使い手であり、もしかしたらまだ何か隠し玉を持っている可能性もある。
しかし、一つ気がかりなことがあった。

「祈ちゃん……」

橘音は華陽宮に行き、尾弐は天邪鬼の本拠地である京都に行くのかもしれない。
ポチとシロは迷い家に向かうのだろうか。
もしそうなると、祈だけが敵のお膝元である東京に残されることになる。
敵が3か月は何もしてこないと思われるとはいえ、それは飽くまでも予想だ。
天魔の一軍も一枚岩ではないのもあり、龍脈の神子の力目当ての何者かに狙われないとも限らない。
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160:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/25(水) 01:03:36
こうして東京ブリーチャーズは一時解散し、全員がそれぞれ別の場所で修行に突入する――と思われたが。
次の日、ノエルが従者達に店を託し雪の女王の御殿に赴こうとしていた時だった。
とんでもない一報がもたらされた。

「姫様、大変です! 祈ちゃんを攫ったとの犯行声明文が!」

「はあ!? 一体誰が!?」

「それが……」

促されるままにパソコンの画面を覗いてみると……

雪の女王『祈ちゃんとその家族は預かりました。返して欲しくば私を倒しにきなさい』

「お前か――い!! しかも普段使ってるチャットソフトとはなんという犯行声明に場違いな媒体!
これは定番のいかにも味方っぽいやつが敵の一味だったパターンかもしれない……。
こうしちゃいられない! カイ、ゲルダ、ハクト! 出撃だ!」

「「「御意!」」」
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161:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/25(水) 01:04:36
数時間後――意識を取り戻した乃恵瑠は、雪の女王の前に正座させられ、説教をくらっていた。

「全く……災厄の力を手懐けたのはいいものの全然本来の力を引き出せていないではありませんか。
それで東京を救おうだなんて話になりませんよ!」

「ご、ごめんなさーい!」

こうなると昔の修業時代のトラウマが蘇り、頭が上がらない。雪の女王の修行は超厳しかったのだ。
つまるところ、雪の女王は実は今でも超強かった。
以前クリスよりも弱い振りをしていたのも、最終的にノエル(みゆき)を宿命から解き放つための演技だったのだろう。

「母上……どこまで知っている? どこまで仕組んでいた? 母上は一体何者なのだ?」

「最初の二つの質問は大体あなたが想像している程度……とでも答えておきましょう。
何者かと聞かれてもそのまんま雪の女王としか。敢えて言い換えるなら世界の雪妖を統べる者、でしょうか」

乃恵瑠は頭を抱えた。

「そんな噂はあったけどマジでそうだったか……ガチで凄い人か……」
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162:
御幸 乃恵瑠 ◆4fQkd8JTfc[sage] 2019/09/25(水) 01:06:09
「良かった……祈ちゃんに会わせて! 一緒に修行しようって前から言ってたんだ!」

「駄目です」

「えっ」

身も蓋もなく断られ、唖然とするノエル。

「連携技開発とか言ってキャッキャしてる場合じゃありませんから!
本来は私より強い力を持っているはずなのに私に手も足も出ないとは今から地獄の特訓をしても間に合うかどうか。
理性の氷パズルは修理するついでに改良しておきます。
カイとゲルダは乃恵瑠に”新しいそり靴”と”世界のすべて”を貸して。使いこなせるように教えてあげてください」

”新しいそり靴”と”世界のすべて”は、カイとゲルダが乃恵瑠の従者になるときに雪の女王からそれぞれ授かった靴型妖具と妖杖のこと。
それを乃恵瑠に使えるようになれという。

「えーと、それ、最終的には妖具を3種類同時使用ってことだよね……」

「そう! 童話”雪の女王”の三種の神器――あなた程の器があれば使いこなせるはずです」
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163:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/29(日) 23:58:04
>「そして……彼は今、この帝都で陰謀を張り巡らせている。そう、ボクたちの敵は『神の長子』なのです」
>「怪人65535面相、またの名を赤マント。でも、そんなのはもちろん本名じゃない。そう――」
>「天魔ベリアル。――それが、彼の名前です」

安倍晴朧の私室。
東京ブリーチャーズ側の重要人物が集められた会合の中で、那須野橘音の口から語られた怨敵たる赤マントの正体。
それを知った尾弐は、眉間に皺を寄せ口元を右手で覆う。

「……ギリシア神話のテューポーン、ゾロアスター教のアジ・ダハーカ、北欧神話のロキの子供達、だったか」
「神話の終わりに現れる、神より力を与えられ、神の想定を上回り悪を成す存在は幾つか居るらしいが……話を聞くに、ベリアルってのは十字教が生み出したソレじゃねぇか」

口調こそ冷静であるが、その頬には冷や汗が伝っており、それが尾弐が天魔ベリアルという存在に尾弐が大きな脅威を抱いた事を正確に伝えている。
……尾弐がここまで警戒するのも当然と言えよう。
力であれ謀略であれ、神話体系における頂点である神を出し抜く能力を持つという事が示す意味。
それ即ち――――『その存在』が神に等しい邪悪であるという事なのだから。

「昔に語り聞いた十字教における黙示録の獣……いや、それよりも性質が悪ぃ」
「神話に語られない脅威なんざ、現時点で神を凌駕してる証左じゃねぇか」

神を上回る脅威。まして、赤マント――ベリアルの神話体系は、一神教かつ世界に3つ有る大宗教の一つだ。続き30行
164:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/29(日) 23:58:32
「……ハァ。まあアレだな。今の話を聞くに、今の俺の力じゃあ相対するには無理がある。せめて謀略を力づくで跳ね除けられるだけの力が必要だ」
「橘音の言う通り、オジサンもせいぜい力を付けさせて貰うとするかね」

尾弐の赤マント……ベリアルへの憎悪は冷める事は無い。
だが、それを糧に暴走しても良い結果が齎される事は無い事が理解出来る程度には尾弐は大人であった。

>「だが、元はと言えばベリアル様のなしたこと。我ら天軍にも責任はある……!このまま手をこまねいてはいない!」
>「天軍は動かせないが……私の私兵たちであれば自由になるはず。必ず参戦はする……いや、させてほしい」

(ベリアルを倒せなくても大した被害は無く、倒せたら十字教の神サマの威光って訳だ。神サマ思いの随分と『伝統的な』やり方じゃねぇか)

だから。大人であるから――――ミカエルの、十字教の勝手な言い分に対して、侮蔑の感情を抱きこそすれ、それを言葉にはしない。言葉に出来ない。
例えほんの僅かであれ数の優位と力の優位を損ねない為に、ただただ自分の感情を御し、其れを飲み込み、無理矢理に消化する。

>「……やむを得ん。乗り掛かった舟だ、クソ坊主。付き合ってやるぞ、貴様の修行にな。二ヶ月で酒呑童子を上回る力を手に入れる」
「俺の腰は脆いからお手柔らかに……と言いてぇとこだが、今回ばかりは無茶しねぇとならねぇからな。お前さんの才覚に期待させて貰うぜ、外道丸」

そうしてミカエルから視線を外した尾弐は、外道丸へ……次いで那須野橘音へと視線を向ける。

>「クロオさん……本当は、クロオさんと一緒に修行したいんですけど。今は私情は無しです……許してください」続き21行
165:
尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE[sage] 2019/09/29(日) 23:59:32
京都へ戻る道中。
何時かの遠い昔の様に、茜色に染まった田舎道を歩く尾弐と外道丸。
夕暮れに影を伸ばしながら、彼らは他愛無く語り合う。

「……しかし、修行といってもオジサンの伸びしろはどの程度あるモンかね」
「安心しろクソ坊主。修行の方法など、とうに10は思いついている……使い辛い固有能力なんぞに開花せねば、もう100通りは手段はあったのだがな」
「そいつぁ、迷惑掛けたな。お詫びに晩飯はオジサンの手作り鍋にしてやるよ」
「フン。飯一つで頭脳労働とは、随分と割に合わない事だ」
「適材適所って奴だ。嫌なら出前でも頼むか?」
「…………いや、いい。仕方ないから食べてやる。椎茸は抜くのだぞ」
「あいよ。山菜増し増しでな」

そうして、弐つの影は先へ先へと進んでいく

 ただいま おかえり

やがて夕闇の果てに影が消える前に、そんな声が聞こえた気がした。
166:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/10/04(金) 02:02:24
>「怪人65535面相、またの名を赤マント。でも、そんなのはもちろん本名じゃない。そう――」
>「天魔ベリアル。――それが、彼の名前です」

「話を聞く限りじゃ、なんだか哀れな気もするけど……」

それはポチの率直な感想だった。
結局のところベリアルを先に殴り付けたのは、唯一神とやらの方だ。

「……だからって、黙って殴られてやる理由にはならないな」

だが、どんな過去があるにせよ――今、ベリアルは自分達を殴る事を楽しんでいる。
今の自分達に殴り返せるだけの力があるかはともかく、黙って餌にされる義理はない。

>「ベリアルはかつて神に奪われた力を取り戻そうとしています。オリンピックに合わせた帝都襲撃も、すべてはその目的のため」
>「そう……。2020年に最盛期を迎える、皇居直下の龍脈のエネルギー。彼はそれを丸ごと手に入れようとしているのです」

「その力ってさ、僕らが先に貰っちゃう事は出来ないの?祈ちゃんなら……」

>「といって、ただ皇居の真下に穴を掘ったりするだけでは龍脈の力は得られません」
>「龍脈の力を我が物とするには、龍脈に――ひいては地球に認められなければならない。祈ちゃんのようにね」続き18行
167:
ポチ ◆CDuTShoToA[sage] 2019/10/04(金) 02:03:12
>「……当然、ベリアルもボクたちの襲撃は想定しているはずです。今すぐ都庁に攻め込んだとしても、返り討ちがオチでしょう」
 「ボクが東京ブリーチャーズに復帰したことで、こうしてあっちの内情をバラすということも予想できるでしょうしね」
 「実際、彼はボクが最後に出撃する際、誰かを地獄から新たに招聘しようとしていました。おそらく、強力な妖壊を」
 「と、いうことで!皆さんには二ヶ月の間、みっちりと修行をして頂きます!」

「修行って……何か、考えが」

>「てぐすね引いて待ち受けている、ベリアルとその仲間たちを退けられる力を手に入れるためのね!方法は各自お任せします!」
>「ひとりでやるもよし!誰かとやるもよし!ただ、時間は限られています。たった二ヶ月の間で、最善の方法でお願いします!」

「……ある訳じゃ、ないんだね」

>「え、ちょっと……つまりノープランってこと!?
 2か月でハイパーインフレできる都合のいい方法なんてあったらもうとっくに強くなってるって!」

「……いや、だとしても、やるしかないんだよ……ノエっち。方法がないなんて、なんの言い訳にもならない」

そうは言っても――ポチ自身も、どうすればいいのかは分からない。
『獣』を、狼王の名を受け継いでから、ポチは常に強さを追い求めてきた。
夜明けと共に街を駆け巡り、タイヤすら食い千切るほどに咬合力を鍛え、不在の妖術にも体を慣らしてきた。続き29行
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