「ワイ、ちょっとレメモちゃんに聞きたいことがあんねん」
「珍しいですねトートからそんな言葉が聞けるとは。シャンプーの銘柄なら答えませんよ」
「いや、そんなプライベートなことやないんや」
「というと」
「クリネアはんって、普段は温厚な子やろ？」
「普段『は』？」
「そのクリネアはんが怒った事件って一体どんなんやったんやろ思てな」
「ああ、あれですか。トートにも知らないことがあるんですね」
「ワイはあくまで記憶を食べるだけで昔のことはそんなに知らんのや。メっちゃんたちに訊いても教えてくれへんし」
「そこで私に訊きに来たと」
「せやねん」
「クリネア様の好物は知ってますか？」
「シュークリームやな！」
「ロールケーキです。とある異界で大人気になっているロールケーキがあると聞いたクリネア様はある日、お忍びでその異界に行ってケーキを買ってきて、王宮の食料庫に入れておいたそうです。仕事が終わった後に食べようと思っていたんですね」
「まさか、それを誰かに食べられて」
「そうです。しかもそれ、どうやらミカエラ様が食べてしまわれたらしく、上司に直談判するわけにも行かずその行き場を失くした怒りの矛先が他の天使や下界に向いた、というわけなんですよ」
「食いもんの恨みはほんまに恐ろしいんやな」
「まあこれ、私の創作なんですけどね」