58レス(2/2)
1:
【ナナシサン】名前の無い能力者2019/06/19(水) 00:09:59 po47pRmg
9(1):
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/21(金) 15:34:14 jNYrSzns(1/2)
>>8
【刹那。一番似合う言葉を探せば、恐らく第一候補に挙げられる】
【狩人と獲物の身分関係は、いつも刹那のうちに構築される】
【ロビン・フッドか、ウィリアム・テルか。何れにせよ、結論はみんな同じこと】
【優秀な狩人は弓が引くことは、獲物が憂愁に浸ることと全くの同義なのだ】

「ああ、コレはどうやら言葉が足りていなかったらしい。」

【だが、有能な狩人はそれ故に知っている】
【己が弓矢で屠らんとする者は、決して贖罪の仔羊などではないことを】

「……だから、私からも一つだけ訂正せねばなりますまい。」

【飛来するは黒色の殺意。空を劈き、心が凍る】
【狙いは精密機械をも鼻で笑う。地を這うアリの瞳を射抜くが如く】
【空を飛び交う大鷲も、到底この弓からは逃れ得まい】
【『ブラックボックス』は開いてみるまでおっかなどっきり玉手箱。此度は開けたら終いに至る、閉じられぬパンドラの箱だった】
【白衣の男は飽くまで只人。完全な不意を完璧に突かれては、対処のたの字も出て来やしない───】

「私が先程、『大事には至らない』と申しましたのは───」続き41行
10:
【アーチャー】ラース[sage] 2019/06/21(金) 15:42:19 LqVY3mvM(2/3)
>>9
/あの、能力は火、水、雷、氷、闇、光の六つで風の本無いようなのですが
11(1):
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/21(金) 16:29:33 jNYrSzns(2/2)
>>8
【刹那。一番似合う言葉を探せば、恐らく第一候補に挙げられる】
【狩人と獲物の身分関係は、いつも刹那のうちに構築される】
【ロビン・フッドか、ウィリアム・テルか。何れにせよ、結論はみんな同じこと】
【優秀な狩人は弓が引くことは、獲物が憂愁に浸ることと全くの同義なのだ】

「ああ、コレはどうやら言葉が足りていなかったらしい。」

【だが、有能な狩人はそれ故に知っている】
【己が弓矢で屠らんとする者は、決して贖罪の仔羊などではないことを】

「……だから、私からも一つだけ訂正せねばなりますまい。」

【飛来するは黒色の殺意。空を劈き、心が凍る】
【狙いは精密機械をも鼻で笑う。地を這うアリの瞳を射抜くが如く】
【空を飛び交う大鷲も、到底この弓からは逃れ得まい】
【『ブラックボックス』は開いてみるまでおっかなどっきり玉手箱。此度は開けたら終いに至る、閉じられぬパンドラの箱だった】
【白衣の男は飽くまで只人。完全な不意を完璧に突かれては、対処のたの字も出て来やしない───】

「私が先程、『大事には至らない』と申しましたのは───」続き43行
12(1):
【アーチャー】ラース[sage] 2019/06/21(金) 17:04:59 LqVY3mvM(3/3)
>>11
真に戦いの始まりを告げた第一矢の解放とほぼ同時、男も何らかの能力を発動した
それとともに巻き上がる砂塵は、しかしそれだけでは矢に影響は及ぼせない
故に、それは男の力の一端の前兆にしかすぎないということで

「…氷の障壁か」

砂塵の内から顕現するは半透明の障壁
それを以て矢を反らし、弾き無傷のままに男は立っていた
自信満々に魔本を見せつけ、こちらを挑発してきたのはこちらの遠距離攻撃に対処する自信があったからということか

「いいじゃないか、よく似合ってるよ」
「引きこもりが外になんか出れるはずないもんなぁ」

なるほど、確かにそれは強力だ
正面からの生中な一矢、ニ矢程度では弾かれてしまい現状が続くのみだろう
いや、一方的に向こうがこちらを攻撃できる可能性だってある分こちらが不利か
だがそれでもなお彼は余裕ぶった口調と薄い笑みを崩さない

「おいおい、よく俺を見てみろよ。やっぱりインテリは目が悪いのか?」続き19行
13(2):
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/22(土) 00:20:01 gssIjV2w(1/2)
>>12
【白無垢に包まれた女王を傷つけることは適わない】
【それが如何に鋭利な矢の一撃であろうとも、だ】
【氷という物質は、その見てくれと色彩からは想像もつかない程に堅牢な城塞たりうる】
【純水のみで構成された氷塊ともなれば、視界はお互いに相応に確保できる】
【……思い通りにフィールドを形成してしまうには、またとなく効率的な手段だ】

「ああ、残念ながら、年がら年中書斎に引きこもりがちになると視力も幾分落ちてしまうものでしてね。」
「だからこうして、たまには外の空気を肺いっぱいに詰め込まなくてはなりません。いやはや、まったく困ったものですね。」

【そう言う口調こそ淡白だが、その表情たるや、いかにもご満悦といった様子だ】
【自分の作戦が上手くいったからか、それとも自分が造り上げた彫刻に随分と自信があるのか】
【───あるいは、本を持ち替えながら対峙する、 この状況そのものに?】
【分厚い氷越しでは、表情の些細までクリアには見えやしないのがオチなのだが】

【まあ、どちらにせよ結論に大きな影響は出やしない。如何に達人の弓だろうと、たった一本の矢を使って一体何が出来るだろう】
【上を通して狙撃する? なるほど、出来ないことは無かろうが数歩も横にズレれば全く問題はないだろう】
【それすらしないということは、早くも万策尽き果ててヤケを起こしたということか。それならば何回障壁を射られたところで、結果は同じで───】

続き34行
14:
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/22(土) 00:36:24 gssIjV2w(2/2)
(>>13続き)
【煌々たる龍の輝きに照らされて、白衣は燃え上がるような夕陽の色に染まっている】
【そうだ。氷の障壁は砕かれこそしたが、その次を用意するには十分な時間を確保してくれていた】

「さて……そういう伝承に伝えられる類の弓兵という者は、このような龍にすら果敢に立ち向かうのだと聞きます。」
「どうだ、貴方自身を試してみるにはいい機会だとは思いませんか! 私も付き合って頂いている身だ、それぐらいの返礼はお安い御用ですとも!」

【そう言い終わるが早いか、龍の口が弓兵の男に向けてガバッと大きく開かれた】
【放たれるのは無慈悲の火球。ヒト一人程度は包み込めそうな一撃が次へ次へと一直線に繰り出される】
【直撃すれば戦闘不能は免れない、掠めるだけでも皮膚の一端は焼け焦げることになろう】
【さらに火球は空間を加熱し、膨張した空気は気流の乱れを引き起こしている】
【“さあ、この難題にお前はどう対処する……?”】
【男は愉しげな笑いを崩さずに、その行方を見守っている】
15(1):
【アーチャー】ラース[sage] 2019/06/22(土) 01:14:33 VWebnUcQ(1/2)
>>13
10,11,12──まだまだまだ
機械よりも精密に、しかして渾身の力を込めた矢を解き放ち続ける
並の達人では不可能だろう、熟練したそれでも極限の集中を必要とされるであろうそれを彼はいともたやすく行い続ける
どれだけ堅固であったとしても、耐久の限界値は存在する
まして板状の氷となれば一点に致命的な罅を入れればあとは砕け散るのみ

「なるほど、じゃあもっと空気を吸い込みやすくしてやろう」
「なに、大したことじゃない。対価はお前の命で十分だ」

故に、果て無く続くかと思われたそれにも当然終わりは訪れる
弓兵として培った直感と視力がかの障壁の限界を知覚した
──次の一矢で砕けるだろう
より大きな笑みを浮かべて放ったそれは真実難攻不落に見えた城壁を打ち砕き──

「~♪これで少しは男前が増したんじゃないか?」

──城の主の頬に一筋の傷を植え付けた
かすり傷程度とはいえ、先に傷をつけたのは精神的に一歩上をとれた
口笛とともに更なる一矢をつがえ、射る続き31行
16:
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/22(土) 20:21:25 pDcQtH7c(1/3)
【旧き伝承に曰く、とある東国の英雄は地より解き放つ弓矢によりて】
【天つ日輪の九つを天より射落としたという
17:
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/22(土) 22:32:12 pDcQtH7c(2/3)
>>15
【旧き伝承に曰く、とある東国の英雄は地より解き放つ弓矢によりて】
【天つ日輪の九つを天より射落としたのだという】
【それは飽くまで伝説であり、伝説とは人々の信仰が昇華された一つのカタチだ】
【物語において英雄たちは、必ずや伝承に伝わる力を得る】
【そして英雄たちは必ずや己が試練と対峙する】
【それは新たな信仰を集め、やがては新たな伝承となる】


【この街は、その塗り固められた信仰が、幾重に重なる伝承たちが集う場所】
【数奇な運命の織物を成す類稀なる命が集い】
【命は己が試練と対峙し、試練は新たな輝きを灯す】
【それが新たな物語の火種となるか、尽き果てる蝋燭の最期の一瞬と果てるか】
【いずれにせよ、物語は廻るのだ。全ての命が果てるまで、異能の回帰は終わらない】

「そうとも、お前の言う通りだ。試練とは常に『事物を上回る超常』のことを指す。私がお前を試すことなど万に一つも有り得ない。」
「───だからこそ、これは“試練”なのだ!そうとも、私を包むこの『守護者』も、私を護る『城塞』も、私を射抜く『弓矢』でさえも……! 総てはみんな理屈の外だ。我々の人智を超えた、紛れもない『超常』だ!」

【火球、火球、火球、火球。矢継ぎ早の乱撃は、されど弓兵の躰を捉えるには能わない】
【放ち、束ねること七つ。弓兵は余裕の表情だ。されど額には僅かに汗が滲んでいる】続き16行
18(2):
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/22(土) 22:32:28 pDcQtH7c(3/3)
「私はこの火焔魔導の体系を三歳の時には完成させていた。たとえこの本など無くともな、任意の状況下で発動させることなど実に容易いことだった。」
「……私は生まれ出でてから、両親の寵愛を受けて育ってきた。私自身の為でない。私自身が持つ『才能』の為だ。薄々分かってはいたことだがな。」

【……ところが、続ける語りの中で不意に王の笑みは途絶えた】
【否、厳密には途絶えてはいない。ただ、その笑みの中に僅かな影が差しただけだ】
【……静かな、絶望の色だ】

「しかし、私の根本には生来より別の理解があった。この才能は『自分のものではない』のだと。私は生まれもって、魔を操る者であると『定義付けられていた』のだと。」
「それを本当の意味で知ってから、私はずっと探していた。この私が一体何者であるのかを、明確に指し示してくれる存在を……!」
「漸く辿り着いたのだ、この街に……。我が真なる同胞たちの集う場所に!! だから、さあ、私に次を見せてくれ! 英雄は古来より伝承の如く、試練を乗り越えてみせるものだろう!?」

【その絶望の内側に狂った笑顔が、火の粉に照らされ顕れる】
【王は語る。己の絶望の所以を。己が王国に立つ目的を】
【弓兵にとっては、まるで聞く意味も義理も、一切合切無い言葉だ】

【だから、僅かにでも彼の心が動かされることはあるまい】
【否、仮に彼の心が揺れ動いたのだとしても……伝承の英雄でもない彼の眼がソイツを見逃す筈がない】
【偶然にも王の喉元にまで近づいた反撃の一矢……ただの偶然が描いていた、必然なる軌道の正体】

続き34行
19:
【アーチャー】ラース[sage] 2019/06/22(土) 23:02:15 VWebnUcQ(2/2)
>>18
──あぁ、雑音だ。煩わしいノイズを吐くんじゃない
孤独の王の語る苦悩も絶望も怒りも狂気も悲哀もその全てが不愉快だ
名さえ知らぬ相手に何を期待している、何を求めているという
貴様など、こちらにとっては単なる障害でしかないのだぞ
故に彼の返す言葉は決まっていて──

「──あぁ、うるさいぞ。お伽噺の登場人物にでもなったつもりか」
「大きな声で“悲劇の過去”とやらを喚きたてるな、お前に興味なんてないんだよ」

生憎だが彼は英雄でもなければ光の勇者を志した覚えもない
王でなく、勇者でなく、兵でなく、友でもない彼にはその慟哭を聞き届ける義理も謂れもない

だが、しかし
20:
【アーチャー】ラース[sage] 2019/06/23(日) 00:06:57 kS/.ZPdE
>>18
──あぁ、雑音だ。煩わしいノイズを吐くんじゃない
孤独の王の語る苦悩も絶望も怒りも狂気も悲哀もその全てが不愉快だ
名さえ知らぬ相手に何を期待している、何を求めているという
貴様など、こちらにとっては単なる障害でしかないのだぞ
それに何よりその程度のことのために殺し合いの場に引き込まれたというのが我慢ならない
故に彼の返す言葉は決まっていて──

「──あぁ、うるさいぞ。お伽噺の登場人物にでもなったつもりか」
「大きな声で“悲劇の過去”とやらを喚きたてるな、お前に興味なんてないんだよ」

生憎だが彼は英雄でもなければ光の勇者を志した覚えもない
王でなく、勇者でなく、兵でなく、友でもない彼にはその慟哭を聞き届ける義理も謂れもない

だが、しかし
もしも、もしも仮に王との出会いが異なっていたとするのなら
戦闘という手段でなく、話し合いで、友となる道を選べていたとするのなら
嘆きに答え、手を差し伸べる狩人の姿が、そこにあったのかもしれない

「だが、そうだな。俺は優しいからお前が何者かだけは教えてやるよ」続き40行
21:
【知識の魔導書】エリアス・S・ワイズマン2019/06/23(日) 14:27:42 bfBo9MiQ
【死人に口なし】
【それは逆説的に、言葉を操る者たちの生を証明する一節】
【言葉を紡いでいられるうちは、ソイツは間違いなく『生きて』いる】

【それを更に逆から観察したならば、こうも言うことが出来るだろうか】
【一たび死んだ人間は、何一つとて事を語れはしないのだ】
【その目で、その口で、その身体で、その心で───】
【空気を媒体に選ばずとも、その手段は他に幾らでもあったというのに】
【その王は沈黙を選んだ。己の底無しの絶望が、己の恵まれた生すらも塗り潰していたからだ】


【嗚呼……良いぞ。この充足だ、この昂揚だ】
【こうしてみるまで終ぞ気がつきはしなかったが、今なら分かる。私は大きな間違いを犯していたのだ】
【『力を持つ者には責務が伴う』のだと、出来る限りの博愛に徹しねばならぬと考え、私自身の才能を決して人に向けようとは思わなかった】
【だが、むしろ逆だ。力を持つ者はその才を振るい、他の才能を奪い合うことにこそ責がある! 通りで気がつかなかった筈だ、私は『死んでいた』筈だ!】
【今、私は間違いなく『生きている』!】
【音が耳から遠ざかっていく。聞こえるのはただ、炎が弾けた残滓の音のみ】
【光が目から遠ざかっていく。見えるのはただ、白色の光と化した業火のみ】
【感覚はただ一瞬のためだけに、弓兵も斯くやと言わるる鋭敏の窮極に至る】
続き53行
22(1):
【聖剣】刃2020/06/03(水) 18:04:40 ZkmU.msI(1/2)
剣を振る
相手がいるわけではないが、己を高める修練として
鬼気迫る表情で繰り返されるそれは魂にまで染みついた習慣、あるいは習性といっていいだろう
淡々と繰り返されるそれは、しかしそのどれもが極限の軌跡だ
見るものが見れば、否、誰が見てもそれが剣における一つの頂であるとわかるもの

「………」

ふいに、剣を止める
修練を切り上げた、わけではない
何もなければ一昼夜この修練をやめなどしない

彼の動きが止まった理由は二つに一つ
弱者の声か、何者かが接近しているか
23(1):
【魔剣】2020/06/03(水) 23:03:26 V9MjiJW.
>>22
「おっとォ、練習の邪魔しちゃったかな?わるいわるい」

男の耳に馴れ馴れしい声が届く。
声の主へと目をやれば、その身に余るほどの大剣を背負った女が確認できるだろう。

「あ、いきなり襲いかかるなんてよしてくれよ!別にアンタと戦う気はない
さっきから見てたんだよ、アンタの剣捌き!ありゃあ勝てる気がしないね」

男が何か反応を示す前に女は両手を上げて敵意がないことを示した。
その態度と言葉通り、このおしゃべりな女からはそういったものが感じられないはずだ。
だが男は気付くだろうか。ジリジリとにじり寄る歩みに、人懐っこい表情の裏に、"殺意"が隠されていることに。

「まぁ、あたしも剣をやってんだけどさ。こーんなデカいもんだからなかなか難しくってよ
……もっとちっこくならないもんか、ねェ!!!」

両者の距離、数メートル。女は素早い動きで半身になり背負った大剣の切っ先を男に向ける。
瞬間、大剣を伸ばし離れた位置からの"突き"を繰り出した。
24(1):
【聖剣】刃[sage] 2020/06/03(水) 23:50:51 ZkmU.msI(2/2)
>>23
人の気配
それがこちらに近づいていることに気づいて手を止めて間もなく、女の声が響く
目を向けてみれば自身の持つそれと同等、否それを上回る剣を持った女の姿

「………」

女の言葉に対し、彼はただ体をそちらへ向けるのみ
言葉はなく、彼の態度も心中も巨木の様に泰然自若
遥か昔から知っている
害意、敵意のあるなしではない
こういう手合いは″碌でもない″のだ
あぁほら、現に───

───敵意などよりよほど純粋な殺意が、出ているではないか

瞬間、女が剣を構えると同時に弾丸もかくやという速度で突き放つ
その鋭さは先の彼の素振りに負けず劣らずの極限
少なくとも剣を扱う技量において彼と同格であるということの証明に他ならなかった
続き24行
25(1):
【魔剣】 ◆WLFnGuGavM2020/06/04(木) 00:40:56 KUEOBSz2(1/4)
>>24
「うえぇー、マジかよ……。やっぱ強いのな」

今の奇襲で終わらせる気であったのだろう。女は飄々とした態度を崩さないまま驚嘆した。
しかし当然これで万策尽きたわけもなく、いつの間にか元の大きさへ戻っていた大剣を構え、男へ向き直る。

「…アンタも英雄気取りか?
そんなら、そんな真っ黒な格好やめたほうが……ッ!」

男から放たれた覇気に当てられ、ヘラヘラと緩んだ口許に一瞬力が入る。
迫りくる瞬間、畏怖さえ覚えたがそれで腰を抜かすほど彼女は弱者ではなかった。

眩む視界の中で大剣を地に突き立てるように構える。太刀筋が見えず半ば賭けだったが、剣の大きさに物を言わせた防御は男の剣を止めた。

「人の科白を遮るなよ。それが悪役の言葉でもな」

切っ先は地に向かっている。そのまま大剣を瞬時に伸縮させ、剣に押し上げられる形で宙を舞う。
そしてもう一度剣を伸長。質量の増幅した大剣を宙から振り下ろす。
26(1):
【聖剣】刃[sage] 2020/06/04(木) 01:11:29 ip4XmjoE(1/5)
聖光の目くらましによる真っ向からの不意打ち
しかしそれは女の経験と大剣の質量によって防がれる
ならばと追撃の刃を振るうが、女の姿はすでにそこになかった

──先ほども見せた剣の伸縮の応用による跳躍
女の能力は恐らく大剣の大きさの操作と見ていいだろう

近寄れば同レベルの技量で対応され、距離を取れば伸びた刃で反撃される
なるほど、単純だが強力だ

「二つほど訂正がある、俺は英雄を気取ったことなどない
そして──」

飛んだ女を視界にとらえる
持つ武器の大きさは違えど姿勢で分かる、あれは振り下ろしの構えだ
先程の様に衝撃を殺せない上空からの攻撃となると、正面から受けるのは愚策
互角のパワーに武器の重量、重力が加算されたものを受け止めれば死なないまでも隙ができるのは避けられない
となれば

「──悪党に言葉を話す権利などない」続き11行
27:
【聖剣】刃[sage] 2020/06/04(木) 01:12:36 ip4XmjoE(2/5)
>>25ですー
/つけそこねすいません!
28(1):
【魔剣】 ◆WLFnGuGavM2020/06/04(木) 01:49:20 KUEOBSz2(2/4)
>>26
剣を逸らされ、空中で体勢を崩す。
着地を狙われることなど百も承知だったが、隙を埋めることは叶わなかった。
左肩口に男の刃が滑る。苦し紛れに身体を翻したおかげで断頭は避けられた。しかしながら胸を撫で下ろしている暇などない。

「ッ…いってぇな!!!」

反撃を試みた女が大剣を振りかぶった直後、剣に黒いモヤがかかる。
剣を振り始める頃にはもう刀身を覆い隠していたそれらは晴れ、禍々しい大鎌が顔を出すだろう。
敵の血と己の魂を喰らわせ変貌させた凶刃が男の首を刈るべく迫る。
29(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/06/04(木) 02:12:17 ip4XmjoE(3/5)
>>28
着地後の隙を狙えど、その首を落とすことは叶わない
肩を裂き、幾分かのダメージを与えられこそしたものの男が求むるは敵手の絶命のみだ
理解はしていたが、一筋縄ではいかぬ難敵だ
そして、女からの反撃の刃に合わせて防御の構えを取ろうとして──
──わずかばかり瞠目した

女が剣を振る直前の、あるかないかの一瞬
闇が剣を覆ったかと思えばそこにあったのは剣ではなく大鎌だった
攻撃の来る位置も、方向もこの瞬間までは気が付けないそれに彼は必然後手に回る
どうあがこうと彼の防御は間に合わない

「ク…ッ!」

死神が如き首を刈られるるその刹那彼は体を屈めることによって回避を試みるが、十全には至らない
致命こそ避けたものの右頭部付近を大きく裂かれる
迸る激痛にしかし構っている暇はない
この絶命必死の空間から離脱をしなければならない

「剣の縮尺ではなく、形状の変化が貴様の能力か…!」続き3行
30(1):
【魔剣】 ◆WLFnGuGavM2020/06/04(木) 02:52:33 KUEOBSz2(3/4)
>>29
鎌を振った後隙を狙った攻撃を嫌い、女もそこから飛び退いた。

「そういう事だ。別に鎌じゃなくても良かったんだけどよ、こっちのが悪っぽいだろ?」

そう言ってはおもむろに鎌を振り回してはゆっくりと男に向ける。

「アンタの剣より遥かにデカい。刀身も、リーチも。
はっきり言ってアンタに勝ち目はない。

……逃してやってもいいんだぜ。英雄気取りの勇者さんよ。」

挑発か、男の身を案じての科白か。答えは女の見下したような薄ら笑いにある。
男の変わらぬ表情や淡々とした太刀筋を考えれば挑発に乗せられ激昂して無計画に向かってくることなど期待できない。
しかし何にせよ肉薄してくることは確実だと踏んだ。
そうなれば言葉通りリーチの長いこちらが有利。向かってくるところを迎撃すればいい。
男に自然な形で攻撃の機会を与え、女はそれを待った。
31(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/06/04(木) 03:48:50 ip4XmjoE(4/5)
>>30
お互いに飛びのき、一瞬の静寂が生まれる
距離が空いたとはいえここも相手の射程内、一瞬たりとも気は緩められない
頭部の傷ゆえに多く流れる血が鬱陶しい
このままいけば、出血度合いはこちらが不利か

「戯け、俺は英雄気取りではないと言ったのが聞こえなかったか?」

推論の肯定、そしてその言葉ぶりから察するに鎌以外の形状に変えられることも確実
最低でもあらゆる近接武器に変化すると見ていいだろう
取れる手段が多いということはそれだけで脅威だ
しかし──

「そして、俺に勝ち目がないだと?
強気な挑発は貴様の弱気の裏返しに見えるぞ」

──それは、彼の敗北を意味しない
手数の多さは確かに脅威だ
だが、それだけだ
傷は負うだろう、一筋縄ではいかぬだろう続き27行
32(1):
【魔剣】 ◆WLFnGuGavM2020/06/04(木) 08:59:09 KUEOBSz2(4/4)
>>31
「へっ、よく喋るな。キメ台詞か?それ」

向かってくる男に武器を振るう。そこに鎌の姿はなく、あるのは鎌より遥かに大きな斧だった。
一瞬のうちに変わる攻撃範囲。常人であれば、否、戦いに慣れた者であっても対応するのは困難を極めるであろう。

この一撃で終わるはずだった。

「…ッ!!」

変化させた斧はこの場面で初めて使ったわけではないがしかし、技量は元の大剣よりか大幅に劣る。
男にその未熟を突かれ、女は体勢を崩し胴を晒した。

咄嗟に防御しようと斧を振り戻そうとしたが、正義の一閃はその間も与えなかった。

飛び散る鮮血。
二度と振られることのない大剣と共に女は地に倒れ伏す。

「…………ゲホッ…………悪党殺して満足か…英雄気取り……
アンタ…ロクな死に方しねぇぞ。…ロクな死に方してないあたしが言うんだ、間違いねえ…」続き6行
33:
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/06/04(木) 23:38:07 ip4XmjoE(5/5)
>>32
疾走した男に迫る鎌から再度変化した処刑人の斬首のギロチン
単純に重く、速く、その瞬間になるまで武器種を気づかせないそれはやはり脅威だ
だが、それを最初から織り込んでいたのなら
何が来るかはわからないが、何であろうとまず弾くことを前提にしていたのならば少し話は変わってくる
つまり、先ではなく後の先を狙うカウンター
技量が五分ならそれを狙うのは厳しい賭けだが、そうでないならばやって見せると男は剣を振るう

「──シ、ィッ!」

金属音が鳴り響き、彼らにとっては永遠の、しかして刹那に等しい時間の鍔迫り合いが発生する
素の力は互角、技量はこちらが上、しかし重量差により一撃の威力は相手が上
このまま押し込むには一手足りない
故にこそ彼は聖剣に秘められたもう一つの力を開放する
瞬間、以前は拡散されていた光が収束し、刃を押しのけるもう一つの斬撃と成り替わる
十全の力は籠めるべくもない、これまでの刃に比べればそれはとるに足らない小手先の威力しか秘めていない
だがしかし、この膠着を打ち破るには十分な力を秘めていて──

「──殺ったぞ」
続き20行
34:
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/06/08(月) 18:45:57 0HbV5rH6
悪を斬る
それはもはや彼にとって呼吸に等しい
使命感でも、義憤でも、まして正義感などでは断じてない
ただ、生まれた折よりそれを続けてきたがゆえにそうしないと気持ちが悪い、息が詰まるという感覚によって悪を切り裂くのだ
故に今宵もまた大衆の目につくき、されどそれが故に誰も気に留めない邪悪の温床の地にて素振りと変わらぬ調子で剣を振るい、多くの死体を積み上げる

「──終いか」

そして目に映るすべてを斬滅し終えたと確認した後、刃についた血を払い捨て鞘へと戻す
纏う黒衣も、その両手も、転がる屍の鮮血で染めながら屍山血河の荒野に一人立つ姿はまさに悪鬼と呼んでいいだろう
恐らくはこの世の誰よりも悪事を為したものを殺している、という点だけを見れば彼のやっていることは広義的に見て正義、と言えるのだろう
だがその実態がこのような栄光も、脚光も、崇高さも欠片たりとてないものだと誰が知ろう

″守るために殺す″という多数を邪悪から守るためには避けようのない罪業ではない
″罪の深さをその身で分からせるために殺す″という裁きでもない
″ただ、そうあれかしと望まれた″という己自身の意思のない対邪悪に特化した属性を帯びた刀剣の理屈で彼は殺すのだ

きっと、真の正義がこの惨状を見れば義憤を抱くのだろう
きっと、真の邪悪がこれを見れば彼を嗤うのだろう
続き6行
35(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/15(水) 22:53:07 Rb1tRTd2
「───」

血に濡れた剣を手にし、一人の男が大樹を背に座して眠っている
剣だけでなくいたるところを血で濡らしているが、よく見れば男には一筋たりとも傷はない
つまり、全てが彼と敵対した者の返り血だ
総身を返り血で濡らして目を閉じているその様は、はたから見れば死んでいるようにさえ見えるだろう
しかし、見るものが見ればわかるだろうが彼は眠っている今でさえ油断は欠片もなく警戒を周囲に張り巡らせている
仮に今銃弾で狙われたとしても即座に反応して見せることだろう

善人ならば重傷に見える彼を心配して駆け寄るものもいるかもしれない
腕の立つものならば彼の警戒を感じ取り何かアクションを起こしてみるかもしれない
悪人ならばあるいは死んだように見える彼の身ぐるみをはがそうとするかもしれない

これらのどれでもない如何な事象が彼に行われようと、彼はすべてに反応して見せるだろう
そして、悪を為そうとするならば心せよ
その時は一切慈悲無き聖なる刃が、貴方に向けられることとなる

/これでしばらく待ってみますね
36(1):
【DeathScythe】2020/07/15(水) 23:33:57 6U9PYG.g
>>35
大木に凭れ寝息をたてる男に忍び寄るモノがいた。
そろりと忍足。出来うる限り音を殺し、しかし纏う薄汚れたローブの衣擦れまでは消せず。
表情も窺い知れぬほど目深と被ったフードからは金糸のような、儚くも美しい人形めいた毛髪が垂れている。

「……」

白く細い指が握る飾り気のない長柄は、先端へと視線を這わせれば長大な刃で大鎌だとわかる。
月光を浴びたその純白の刃は息を飲むほどに綺麗で、しかし命を刈り取るようなその形状は空恐ろしい。
寝ている男との距離が十分に近接したならば、ローブを纏いしモノはその刃を男に対して振り下ろすだろう。
37(2):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/16(木) 00:16:04 QXbtDWLA
>>36
かすかな衣擦れ音
それを感知した瞬間一気に目を覚ます
彼我の距離はお互いの持つ武器の射程を考慮に入れれば無いに等しい

「──!」

直後に振り下ろされた大鎌を持っていた剣で弾き、勢いのまま地を蹴り距離を取る
恐るべきは敵手の隠遁術だろう
彼をして衣擦れ音以外の気配をほとんど感じ取ることができなかったのだから

意識を切り替える
ほんの一瞬前まで眠っていたとは思えぬほどに体中に力を巡らせ、希薄だった気配が我ここにありと言わんばかりの膨大な敵意と殺意へと変動する

「眠る相手の不意をつき、殺そうとするとは死神にでもなったつもりか悪党?
 ならばいいだろう、貴様の死を以てその思い上がりを正してやる」

言うと同時、再び地を蹴り今度は彼から近づいていく
彼は剣という一つの道の頂に限りなく近い達人
故にこそ、その歩み、視線誘導、呼吸配分に至るまでのすべてが絶技だ続き5行
38:
【DeathScythe】2020/07/16(木) 08:04:48 Fe7QE/62(1/2)
>>37
/すみません寝てしまってました
/大丈夫ですよ。また夜に返信させてもらいますね
39(1):
【DeathScythe】2020/07/16(木) 20:58:43 Fe7QE/62(2/2)
>>37
「ぴっ!?」

素っ頓狂な声を上げて身を屈めると、頭上には空を斬り裂く音が残る。
躱した、というよりは斬りかかられた事への驚きと恐怖が故の反応のように見える。
しかし事実ローブを纏うモノの首は繋がったままだ。

「こここここころっ!? ちがっ、違うかしらー!! 私はただ貴方の怪我を治そうとしただけかしらー!!」

あたふたと狼狽、忙しなく揺れるフードからはまだあどけなさの残る女の顔が覗く。
必死に弁明する女、その表情からは確かに殺意は感じられないが、寝ている男に刃を振り下ろしたのは事実である。
行動と言動の矛盾はどう見られるのだろうか。

/お待たせしました。よろしくお願いします。
40(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/17(金) 16:05:10 XScESxUU(1/4)
>>39
最高とは言えぬまでも、それなりだと自負していた一撃が避けられた
その事実を前に、彼は敵への警戒心をさらに一段上へと修正する
なるほど、眠っている間に不意を打つようであるから正面からの直接戦闘は増えてかと思いきや存外そうでもないらしい
で、あるならば次はどう攻めるべきか──
と、躱されたと認識して即座に脳内を高速回転させ始めた彼の前で、敵手が彼にとってよくわからないことを言い始める

「寝込みを襲って効果なしと見れば次はだまし討ちでもしようと?
 戯言を吐くのが余程好きと見える」

一見すると事実を言っていると信じてもおかしくない振る舞いと表情からして、詐欺師の類か
殺気も感じず、真実怯えているようなその狼狽ぶりを見ればあるいは善人なら信じてしまうかもしれない
だがしかし、彼は善ではなく遍く悪を切り裂くだけの断罪者
余程の事態がない限り、彼に容赦も慈悲も動揺も欠片たりとも存在せず
只々ひたすらに鋭く強靭な、心に小波一つ立てない刀剣としてあるのみだ

「俺の怪我を治すだと?なるほど、確かに一見すれば俺は負傷していたように見えただろう
 だが、ならば何故声すらかけず気配を消してその鎌を振るった?真に俺を案じていたのならばまず声をかけてみるのが道理だろう」

諸刃の剣に峰はなく、故に斬ると決めたら裂くか裂かれるかのみ続き6行
41(1):
【DeathScythe】2020/07/17(金) 20:23:51 KHA1sJjo(1/4)
>>40
「騙し討ちなんて人聞きが悪いかしら! 寝ているように見えたので、起こしてしまっては悪いと思っただけかしら! それに……わぶっ!?」

紡ごうとした言の葉は砂の礫に遮られる。
フードを被ってはいるものの最下段から巻き上げられた礫たちを防ぐ効果は薄く、容易に女の言動と行動は制限されてしまう。
反射的に閉じられた瞼に視界は奪われ、顔に付いた砂を払おうと自身の頬に触れた瞬間、肩口から滑るように沈み込んできた異物感。
それに気づいた時には既に膝から崩れ落ちていた。

「あっ……がっ……」

血溜まりに沈んでゆく身体と悲鳴にもならぬ呻き声、気管から漏れ出たようなひゅーひゅーという呼吸音から致命的なダメージを負っていることがわかる。
そのまま事切れるかと思われたが、血に塗れた指は自身の大鎌、その純白の刃を?きながらも強く握り締め。
そしてあろうことかその刃を自身の傷口に突き立て始めたのだ。まるで気が触れたかのように何度も何度も。

「そ、それに……信じてもらえない……かしら……こんな、チカラだもの」

必死に紡ぐ言の葉は先程遮られた続きであろう。こんなチカラとはどんなものなのか、繰り返し突き立てられる刃のその先、男によって袈裟斬りに開かれた傷口を見れば理解できるはずだ。
明らかな致命傷であったそれが、次第に修復されていくその光景を見れば。
42(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/17(金) 21:12:47 XScESxUU(2/4)
>>41
未だなにがしかを話そうとする女へと一切合切を無視した一振りを放つ
──今度は確実に切り裂いた
それも感触からして、致命的と言っていい深さで
より確実なものとするためにもう一太刀、といきたいが万が一ということもある
手負いの獣に対する用心はしてしかるべきだろう
油断なく崩れ落ちた女を見据え、僅かに瞠目する
まるで傷口を広げるかのように、自身の大鎌を何度もその身に突き立てている

「…………!」

しかしその傷に対して起こっている事象はまるで正反対のもので
確かな致命傷だったはずのそれが、大鎌を突き立てるという自身をより傷つける行為によってまるで事象を反転させるかのように修復されている
信じがたい光景だが、つまりそれが女の″能力″ということなのだろう
そしてそれは、先の言動が真実偽りのない言葉だったということを裏付けることでもあって

「──なるほど、誤っていたのは俺の方か」

この状況でもまだ自分をだますために、この行動をとっているかもしれない
などというのは、己の過ちを認めぬ醜い自己弁護だろう続き19行
43(1):
【DeathScythe】2020/07/17(金) 21:36:09 KHA1sJjo(2/4)
>>42
「平気平気、誰でも間違いはあるかしら~……ってなにを……っ!?」

自身を何度も斬り付け、漸く普通に喋る事のできる程度まで回復したところで男から謝罪の言葉を聞く。
女はからっとした笑顔でそれに応えた。恐らくはこの物騒な得物故にその刃の持つ能力に懐疑を向けられる事には慣れているのだろう。
よいしょと、大鎌を杖に立ち上がったところで女は予想もしていなかった男の行動を目の当たりにした。
なんと男は自らの剣で以てその腹を貫いたのである。女はその光景にきょとんとするが、すぐに慌てふためき純白の刃を男の腹目掛けて何度も振るうだろう。

「償いなんてそんな大それた事考えなくていいかしら! 強いて言わせてもらうのなら、自分で自分の身体を傷付けるなんてバカなことは2度とやめるかしらー!!」

男が治癒の刃を受け入れたのであれば物凄い剣幕で説教めいた願いを口にする。
女の行動からして多くの人々の傷をこの能力で癒してきたのだろう。そこには曲がりなりにも己が信念があるはずで、自傷行為や自死などは女からすれば全く容認出来ないのだ。
44(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/17(金) 22:03:46 XScESxUU(3/4)
>>43
あぁ、俺とは違いこの女は真に善なるものなのだな
大剣を刺した様を見て、慌てふためき自身を癒そうとする女を見て眩しいものを見るように目を細める
ほとんど無表情だった今までと違い、羨むような顔で

「相分かった。自傷の類は今後二度と行わんとここに誓おう」

突き刺さった剣を引き抜き、徐々に癒えていく傷を見て思う
なんと優しい力なのか、と
死神を連想させ、ともすれば不吉なものとしても見れる大鎌を振るい、ふたを開けてみればもたらす事象はその真逆
俺ほどとはいかずとも、何度も勘違いされてきたはずだろうに誰かを癒すことをやめない高潔な人間性
そこに確かな意思と信念を感じるからこそ、とても美しく──羨ましく思い、知らず手を伸ばしてしまう
それは、傷つけることしか知らない自分にはないものだから
それは、正義と称して殺すことだけがうまくなった自分では届かないものだから
それは、自分の意思なく剣として望まれるがままに殺戮を続けてきた自分にはあまりにも眩しすぎたから

「勘違いで傷つけ、あまつさえ己で付けた傷さえいやしてもらっておきながら図々しいことは百も承知で聞きたい
 なぜ、こんなことができるのだ?なぜ、己を傷つけてきた相手さえためらいなく癒せる?
 自分で言うのもなんだが、俺は仮に何かが違えばあの場でためらいなくとどめを刺していたような男だぞ?」
続き5行
45(1):
【DeathScythe】2020/07/17(金) 22:29:58 KHA1sJjo(3/4)
>>44
「うん、これでいいかしら!」

傷の塞がった男の腹を診て満足気に、ぽんぽんと患部であった場所を撫でるように叩くと笑顔を浮かべた。
そこへ不意に投げ掛けられる問い。顎に手を当て小首を傾げ、少し逡巡する素振りを見せるもすぐに口を開いてみせた。

「うーん、なぜかって聞かれてもそんなに綺麗な言葉は出ないかしら。ただ私にはそれが出来るから、出来ることをやっているだけ。
 人ひとりじゃ出来ないことがたーくさんある世界で、自分だけが出来ることに一生懸命になるって小さいけれど素敵なことじゃないかしら?
 なんて、他に取り柄も無いからそれに縋ってるだけかも」

言い終えると、女は少し照れているのだろう。視線を逸らして俯き、そしてそれを誤魔化すようにけらけらと笑った。
しかし紡がれた言の葉に迷いは無く、紛れもなく真っ直ぐであった。

「例え相手が誰であろうと貴方の過去に何があろうと、貴方がどんな道を歩んで何処に向かっているのだとしても。
 怪我をしていれば治してみせるかしら。それが私の出来る事で、私にしか出来ない事でもあるから」

まあ怪我してないのに勘違いしちゃったのは御愛敬かしら、と悪戯っぽく笑うと軽く会釈して男に背を向けた。
46(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/17(金) 22:54:12 XScESxUU(4/4)
>>45
「なるほど、陳腐な言葉ではあるがとても素晴らしいことだと思うよ」

照れるように返された答えは特別なことは何もないありふれたもので
しかし、ありふれているからこそ誰も意図してやらないもので
改めてそれが手に入らないものだと分かるから、ただ、噛み締めるように目を閉じた

「俺が言うまでもないことだろうが、どうかそのまま歩み続けてくれ
 そして余計な世話であることは重々承知だがもしもその身に危険が迫ったなら、その時は必ず助けると約束しよう」

去り行く女の背中にそれだけを告げて、彼も踵を返す
所詮この身は刀剣なれば、彼女のようになれることはありえない
だが、それでもせめて彼女のような人間を守るために、一振りの剣としてこの身が砕け散るまで駆け抜けることを胸に誓う
我が始まりに与えられた、聖なる剣の名の下に


/ありがとうございましたー!ぐだちゃって申し訳ないです!
47:
【DeathScythe】2020/07/17(金) 23:11:29 KHA1sJjo(4/4)
>>46
「約束は好きかしら。他人との繋がりを感じられるから……ありがとう」

背に投げ掛けられた言の葉にくすりと、誰へも聞こえぬ独言を夜風が浚った。
男の言葉を意識的に脳内へとこだまさせ、ズキズキとした内からの呼び声に蓋をした。
しかし蓋は閉まれば開くものだ。例え誰に望まれずとも。

/こちらこそ日を跨がせてすみません。ありがとうございました。
48(1):
【マニュピレイズ】[sage] 2020/07/18(土) 15:15:43 bwL13Xa2
眠りに落ちた夜の街、豪奢なネオンが形作った陰に芽吹いた暗夜の標は、時として清廉とは縁遠き悪辣を招く。
幽き暗月だけが見下ろした深閑の裏通り、滴る水音に続いた憫笑が沈黙を掠めて波立たせた。

「くふぅっ………く……くふふ………」

驚愕と恐怖に満ち満ちた男の首を、胸を、腹を
、白衣の裾から伸びる銀の光沢を湛えた触腕めいた刃か連なり、貫いて。
嗚呼 嗚呼 力なくくずおれるその所作のなんと官能的な事だろう。無駄だと言うのに、溢れ失われ行く命の源泉を押し止めようと必死にもがく姿は軽蔑と憐憫を通り越して愉快ですらあった。

「無駄です、無駄あぁっ!………へ、えへへ、だってほらぁ、そんなにたくさん血が出てるのに…………助かるわけ無いじゃないですかぁ
くふ………ばぁーかっ♪しんじゃえっ!そのまましんじゃえよぉっ、惨めったらしく足元にすがってぇっ、アンタがバカにした"ガキ"に笑われながらさあっ!?」

鮮血に溺れて尚も生を渇望した男の手を踏み付けて女は狂う。色素の抜け落ちた白い長髪、白い肌、ああまだ齢二十に至ったばかりだろうに、今しがた潰えたいのちを見送ったその紅玉は、麗しき顔立ちは、紛う事なき愉悦に満ちて。
殺してやった、切り刻んでやった、あの汚らわしい男の四肢を壊してやった、やつの尊厳さえも踏みつけにして。
ガキとこの私をせせら笑ったあの顔が、隠し切れぬ怯懦を呈した姿を見て幾度私は絶頂を迎えたのか分からない、ああ今だって、今際の際に産み落とされた諦念とそれに至るまでの道程を想起するだけで思わず熱い息が零れ落ちると言うのに。

血腥の風が囀って、眉を潜めたくなるような匂いが鼻腔を犯す。けれど悪い気はしなかった、否応のない暴虐と暴力が遺したその代え難き痕跡こそが、味わう酒をより甘く芳醇なものにしてくれるから。

「くふ………あぁ、バラバラになったアンタはとても素敵に見えますよぉっ…………
ねぇねぇ、死ぬってぇどんな心地なんでしょうねぇっ。くふふ………」続き3行
49(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/18(土) 17:07:46 sMI2JjxU
>>48
むせ返るほどの血の匂い
喘ぎ苦しみ死にゆく犠牲者の声
それを嘲笑い、肴としながら酒を煽る狂った女
只人なら駆けだし、逃げようとするであろうそれら全てを視界に入れて彼は──

「──そこまでだ」

表の喧騒とはうって変わって静まる暗い裏通りで、その声と足音はやけに響いた
それは特別荒れもせず、静謐に、その狂った所業をこれ以上続けさせはしないと鋼鉄の音色で以て告げている
闇に溶けるような黒衣の様相、それと相反するように携えられた淡く煌めく鋼の剣
この場で起きた全ての恐怖と絶望を鎧袖一触と切り裂いて、決して逃がさぬと鷹の如き鋭い目で女を射抜きながら、男はそこに立っていた

「一体幾度、貴様のその狂った所業に他者を巻き込み傷つけた?
 藻掻き苦しみ死にゆく様は、貴様にこそふさわしい」

許せぬ悪に対して嚇怒を以て発されるべき言葉は、しかし変わらず静謐で
しかし、そこに乗せられた殺意の本流が、必ず殺すと何よりも雄弁に告げていた
どうしようもない悪党を切り裂くことこそが正義の剣としての在り方を望まれた我が在り方で、為すべきことだと狂念で以て思うが故に迷い無く
女と残ったわずかな距離を、躊躇いもなしに駆ける続き6行
50(1):
【マニュピレイズ】[sage] 2020/07/19(日) 13:37:19 x.fbq37w(1/2)
>>49
ばしゃり、幾つにも分かたれた肉の塊が、ベタついた音を伴い地に満ち無機質な混凝土に血桜を描いて潰える。
慎ましさの欠片も無く喉に流し込んだ甘美な雫の一粒一粒が、熱を帯びた身体の芯に良く馴染む。ふと綻んだ口許に一条、紅い軌跡が刻まれて。
鈍化する思考と昂ぶる意識、けれど炉へと薪をくべるが如く、火照りを覚えた身体はまだまだ足りぬと美酒を望む。

「……………えぇ………?」

だがしかし、水面を打った抑止の一言に、柔く暖かな唇は三度目の抱擁を叶える事は能わなかった。
絶頂と悦楽の揺籃に浸り、潤んだ紅玉が虚ろをなぞって男を見据える。尾を引いた余韻を汚した言葉に業を煮やすよりも前に、女は緩慢たる所作にてそれに応えた。

「やだなぁもう………人聞きの悪い………ハジメテだってんですよぉ、ハジメテ………えへ。人を殺すだなんてそんな恐ろしい事………くふっ………
ねぇお兄さぁん………♪それ、もしかして正義の味方ごっこですかぁ?いやいや、バカにするつもりなんて全然無いってんですよぉっ、だってえ男の子ってぇへへ、そういうの好きだって言いますからねぇ…………」

今宵の彼女はやけに饒舌だった、それは酔いが回ったからなのか、人を殺めた高揚感で箍が外れたからなのか、あるいはその両方かもしれないが。
肌が灼けるような濃い敵愾心と、鋭利な殺意を模したが如き黒鉄を前にして、なお歯牙にも掛けぬ物言いで嘲り笑って。

「………ってぇ………いきなりですかぁ?」

静から動へと転じた疾駆、男が大きな一歩で地を踏みしめる度に縮んで近づく彼我の距離。
虚空を辿ったそれはきっと、文字通り必殺を謳うに相応しき一撃であった事だろう。続き13行
51(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/07/19(日) 15:42:19 g2ZByGYI(1/2)
>>50
「どうやらすでに脳が腐っているらしいな、俺のような男が正義の味方であるものか」

悪を殺せと怨念じみた使命感と義務感が身体を突き動かしているだけの男が、どうして正義の使者を名乗れるだろう
情無く慈悲無く容赦無く、粛々と悪を切り裂くこの身はただの刀剣なれば、未知の相手であろうが互いの制空権を触れさせることに恐怖を欠片も抱きはしない
故にこそ、当然今もその剣の冴えに狂い無く、折れず曲がらぬ鋭き鋼を悪を断とうと煌めかせ──

「確かにな、認めよう、貴様は正しい。
 貴様の力の特性、運用法、それに対する対策のどれもに俺は用心をしていなかった」

──手に伝わるは肉を裂く感触ではなく硬質な手ごたえ、同時に響き渡るは鋼の残響
女の操る触腕、そのうち二つが剣を防いでいる
そして遠目からでは分からなかったが──あるいは、今白衣の内より飛び出させたのか、今見えているだけでも触腕の数は3対6本
これがすべてかはわからないが、断言できることはただ一つ、あの段階から後の先を取って防がれた以上この触腕は男の速度の数段上ということ
迅く、そしてあるいは本来の腕以上に精密だ

男は確実に剣において並大抵の相手に後れを取らない、どころか上を取れる実力者だ
彼はその事実を誇張も卑下もせずに正しく受け止めている。その上で認めざるを得ないことが一つ。
仮に正面からの切り合いになれば、確実に手数と速度で封殺されるということを
続き27行
52(1):
【マニュピレイズ】[sage] 2020/07/19(日) 18:21:44 x.fbq37w(2/2)
>>51
衝突、拮抗、静止。猛烈に突き立てられた破壊と殺意の邂逅は、鋼と鋼が奏でた狂想曲となりて仄暗な裏路地に残滓を染み渡らせる。

「えへ………私ってぇ頭がイイんですよぉっ………?誰よりも優秀で………賢くて……ホラぁ、この子を作ったのだってまだ13の時だったんですよ…………」

玉響の間隙を、女の鈴の音めいた声が甘く静かな言の数々が浚う、それは遍くを満たした反響音が夜風に潰える迄のほんの刹那。軋んだ機械腕を愛おしげに視線が伝う。

「その私の脳が腐って………?あはは………巫山戯た口が聞けたもんですねぇっ?棒振りだけが能の愚昧、蒙昧のクセにぃっ………!
アナタみたいなヒトをなんて言うか…………知っていますかあっ?………グズ!そうグズ!そうやって達観したみたいにカッコつけて………上から見下ろすのをやめろってんですよぉっ!」

例えどれほど口汚い悪態で己の尊厳が傷付けられようとも構わない。それらはどうせ、遥か眼下に犇めく愚者共の囀りでしか無いのだから。
だが如何に些細な切欠であったとしても、彼女にとって許せぬ事がたった一つだけある。

「(巫山戯んなってんです!コイツも私をバカにしてぇっ…………ぐぅ………い、痛め付けてやる………認めさせてやる………自分の間違いをぉ………アイツみたいにぃっ!)」

何よりも、何よりも下に見られるのが嫌いだった。頭が良くて、勉強が出来た、でも他の事は何をやってもてんでダメで、故に何時しか自らの得意とする事で一番を取り続ける事でしか自分の存在意義を見つけられなくなっていた。
ああそうだとも、これは唯の意地で、二十の小娘らしい下らぬ癇癪でしかない。あてどない苛立ちの行方定めたように、手放したワインボトルが音を立てて砕け散る。

醜く地べたを這い蹲って血と肉の痕跡と成り果てたこと男と同じように、只々間違いを認めさせると決意を新たに彼女を断罪せんと嘶いた剣を打ち弾かんと司令を下した瞬間に、その変化は唐突に姿を見せた。
続き19行
53(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/07/19(日) 19:29:33 g2ZByGYI(2/2)
>>52
「それも肯定しよう、俺には真実これしか能がない」

極光を放った刹那、呻きとともに触腕の動きが僅かだが停止したらしい
後退の選択肢は無論ない。矛盾のような話だが、この超密着状態のこの場所こそが最も生存確率の高い死地であり、僅かでも離れればもはや勝率は絶無に近いのだ。
故にこそ、さらに前へと体を動かす。安全圏など元よりなく、そんなものを探す気もありはしない。
触腕の届く距離は残らず死地なれば、より勝率の高い死地へと身を躍らせ続けることでしか打倒は叶わない
引けば死に、臆しても死ぬ。なればこそ、引かず臆さずか細い糸の上でどちらかに終わりが来るまで我と彼とでトーテンタンツを続けるのだ

「──あぁ、なるほど。貴様、己を劣等だと自覚しているのか
 俺の棒振りに対して貴様はガラクタいじりか?あぁつまり、誰より自分を己自身で見下しているのか」

頭脳を貶す一言に対しての狼狽具合。意識的か無意識的か、相手を見下すように、己の方が優等であると言いたげに小馬鹿にするような話し方
憶測ではあるが、つまりはそう言うことなのだろう。彼の取り柄が剣だけであるのに対して、彼女は恐らく頭脳なのだ
何があったのかは知らないし、また興味もない。だが、触腕と思考が直結している以上、そこをついて乱すことに意義はある
言葉を信じるなら、これほど驚異的な代物を作り上げている以上は頭脳的に優れているのは間違いないのだ。下手に冷静にさせてしまえば不測の一手を打ってきかねない

「それ以外を肯定されなかったのか、あるいは肯定されたうえでそれでもできぬ自分を恥じ続けているのか。
 どちらかは分からんが敢えて言ってやろう──
 続き16行
54(1):
【マニュピレイズ】[sage] 2020/07/20(月) 14:30:11 8QJC7ce6(1/2)
>>53
痛烈が過ぎる閃光が夜の街を書き換える、心の蔵は何時もよりもずっと速く強く脈打って。
今は霞んだ瞳から得ていた膨大な視覚情報が遮断され、変わりに鋭敏化した聴覚は衣服の擦れや息遣いまでも敏感に掬い取る。
だが…………それが一体なんだと言うのだろう、優れた包丁の使い手が優れた戦士足り得ぬ様に、優れた学者たる彼女とて殺意と厭悪が入り混じる今この場に置いてはただの凡愚と何ら変わりはない。

「分かったような口を利かないでくださいってんです………わ、わたしはぁっ!一番じゃ無いとダメなんですよぉっ………!
…………ええそうですよぉ………他に何も無いんですよぉ私にはぁ………でも一番になれば、誰よりも優秀で居続ければ、みんなはぁ凄いってぇ、褒めてくれるんですよぉっ………ふ、くふふ………」

故に彼女は唯一残された聴覚で、傾けるべきでは無い言の葉に、昂ぶらせてはならない感情を、曝け出してはいけないコンプレックスの吐出を選んでしまった。
耳を貸さなくば、苦し紛れと言えども何か、この頭脳を持ってすれば打開への糸口を掴むが出来たかもしれないのに、転じて触腕を操らば、蹌踉としたこの身体を運んで遁走する道もあったというのに。
背中を通じて通じた硬い感触、一つ、二つに重ねて三つ、着実に迫り来る只々冷たく鋭利な殺意の奔流からの逃避を選択出来る程冷静では無かった。

微かに物の動きを読み取るようになった赫灼たる輝きを湛えた双眸、色を取り戻したそれが見たのは…………下弦の月を背負った黒鉄、ああ今まさに、自らの命脈を断ち切らんと星を喰んで輝いた不可避の凶刃だった。

地を前に突き放す軸足、混凝土に突き立てた二本を引き抜き翳した窮余の一策。だがしかし、そうして弄した小細工などで抗える筈も無く。
先行した質量を持った光の刃が無惨にそれらを破壊して、続いた剣が肩口から臍の横、腰までの肉を縦列に刻む。
空をなぞって進んだ軌跡を浅黒い鮮血が追い掛けた。

「あ…ああ………痛……いたい………やっと………やっと終わったと思ったのにぃっ……!
アイツを殺してぇ………もう何もかも忘れられた筈………だったのにぃ………!」続き21行
55(1):
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/07/20(月) 16:49:04 Rhr7wwrs(1/2)
>>54
乾坤一擲、破滅的で合理的
己の身を顧みず、死んでも殺すと振るった一撃は今度は確かな人体を裂く手ごたえを伝えてくる
一手過てば為すすべもなく殺されていたであろうそれこそ棒を振るしか能のない男の神髄
執念の果てに奇跡をつかんだともいえるが、あるいは順当な結果だろう。なぜなら戦士と学者ではそもそもからして土俵が違う

「…悪いに、決まっているだろう。何があったのかは知らんし、また興味もないがな、何にせよ選んだのは貴様だろう。
 貴様のそれがあれば気に食わないのなら殺さずとも跳ね除けられたろう、結局のところ貴様は望むがままに利用されたのだろう?」

″畢竟、自業自得でしかないだろう″と容赦なく告げながら、あるいは彼は自身が切り裂いた女以上に明確に死の隣にいる
悪を殺すとその身に背負った妄執だけで意識を保ち、倒れ伏してなおその眼光に狂い無く女をにらみつけて、狂気の念を迸らせる
もはや呼吸さえ浅くなりながらも剣を手放す気配はなく、どころかそれを支えにして何とか再び立ちあがらんと裂かれた傷さえ無視しながらその足に力を込めて、また血がそこから噴き出る悪循環
立つほうが致命的なのに、もはや感じていたはずの激痛さえ淡く遠いもの様になっているにもかかわらずそれでも彼は止まらない

「知ったことか、言ったはずだぞ、興味がないと
 よもや貴様、この期に及んでまだ俺が正義の味方だとでも思っているのではあるまいな」

鋼を突き刺し立ち上がり、剣を引きずり不協和音を奏でながらゆっくりと進む彼の姿はまさしく悪鬼羅刹
多くの英雄譚で語られるような美しい刃をその手に抱き、悪を倒すためだけに生きる男はしかし英雄たちには程遠い
棒を振るしか能がない、と女が語った通りだ。殺すことしか知らない、救い、与えることなどできず奪うことしか能がない続き11行
56(1):
【マニュピレイズ】[sage] 2020/07/20(月) 19:46:32 8QJC7ce6(2/2)
>>55
「くふ……ふふっ。"つまらない"………
つまら…ないってんですよ……お兄さん………♪やっぱりグズ……零点です…ふふ…」

酒を取り込み遅鈍極まった痛覚とてやはり、胸を、腹を裂かれれば痛い物だと、生から隔たんと歩みを進める鬼を前に心中にて独白を零す。
自身でも驚く程に平静を取り戻した精神状態はきっと、何もかもがどうでも良くなったが故の、一種の諦めのようなものなのだろう。

救済など最初から期待して居なかったさ、同情?ああ下らない、悪を断つとのたまいながら、それらと何ら違わぬ羅刹蛇蝎へと堕ちた男の言葉に何の意味があると言う?。
禄な答えが帰って来ないと知っていながら、自らで見付けられなかった難題を押し付けたのは。
ああきっと、『どうしてヒトを殺してはいけないの?』そんな子供の屁理屈じみた物言いで自分を正当化して、逃げる事が出来ると思ったから。

「くふ……気付いてるんでしょう?自分の抱えた矛盾に………それとも……自分を剣と言って律しているのは………ふ…
笑わせるなってんですよぉ……アンタは人間でぇ……唯の人殺し……えへ……悪を斬る……って…ッ!言うなら……先ずは自分の……首でも掻っ捌いて………みたらどうだってんですかぁ
それかぁあれ…ですかぁ……?……その身体が……朽ちるまで代行者か何かを……気取って殺し続けるつもりですか………?」

こうして嘲り囀る事で、真に恥ずべき己の姿から、目を逸らせる気がしたからなのだろう。
返答等聞くつもりの無い只々悪辣で、楚々たる顔立ちに似つかわしくも無い詰問を虚空に綴る。

『エミリーは凄いなぁ』 『当然だってんですよ!私に掛かれば朝飯前です!』 『悩みでもあるんですか?えへ…お兄さんの為なら何だってできますよぉっ』 『新薬の副作用の改善……効能の増強、勝手にですけど……私なりに手を加えてみました』 『大発見だってんですよぉ…!これをまたお兄さんの名前で発表すれば、一躍時の人になりますよ!』 『お兄さんの約に立てるなら……私はどうだってイイってんです……だから私と……ずっと……』
続き24行
57:
【聖剣】刃 ◆y7XUmHaaYQ[sage] 2020/07/20(月) 21:06:34 Rhr7wwrs(2/2)
>>56
「その通りだ。俺はただの人殺しで、所詮は望まれたままに選んで殺しているだけの大罪人でしかない。
 だからこそ、今更引く道などありはしない。俺は、この身が折れて木端と砕け散るその時まで無限の修羅道を歩み続ける」

その時、これまで無感情だった男の言葉と表情に始めて諦観と共に自嘲するように笑みが浮かぶ
結局はそういうこと
殺すという手段を取った時点で我も彼も等しく悪で、屑でしかないのだから。いや、殺した数で見ればきっと男の方がよほどだろう
それを自覚して尚、止まらない、止まれない。今なお悪を殺せと心の内で声が聞こえ続けているのだ。
祭り上げられ望まれた。望まれるがままに殺し続けた。
それだけが生存理由だと生まれた時から共にあった自身の半身たる刃が告げている

あぁ、だが
女の触腕が肉体が損傷していようが意思で動かせるのを知っていながら、わざわざ近づいて止めを刺そうとしたのは何故だろう?
斬撃を飛ばした方が、まだしも安全だっただろうに

その事実を、自身を刀剣と称する男は人間の様に気づかないふりをした

「…違いない。」

何て様だ続き11行
58:
【ディオド】 ◆y7XUmHaaYQ2020/07/23(木) 23:51:50 jIR/fiTI
新月の夜
月明かりさえ失われるはずの暗闇は、今では人口の光によってその多くが照らされ昼と変わらぬほどの光量でもってその多くが照らされている
故にこそ、その隙間に生まれる影はより一層の深淵となって逃れられない恐怖を否応なしに叩きつける
昼行性に生まれた人類種の宿命として、暗闇は冷たく恐ろしい

「あっるくのーだいっすきー、どーんどーんいっこっおー♪」

その暗闇の一角で響き渡る、およそ恐怖というものから掛け離れた楽しげな童謡はどこか幼さ残る少年が、手にボールか何かを持ちながら笑顔満面で小躍りするように出鱈目なステップを刻みながら発しているものだった
それは恐怖を誤魔化そうとしてでのものではなく、また恐怖を克服したが故のものでもない
只々純粋に楽しくて楽しくてたまらない、と誰が見てもそれだけでしかないと分かるもの

深淵においてなお欠片たりとも陰らぬ笑顔と声はまるで太陽のようであり、ここは恐ろしい場所ではないのだと聞くものに安堵と安心の感情を想起させる
だがしかし心せねばならない
前述したように光の下には影ができ、それは光が大きければ大きいほどより深く暗いもの
遠くより聞こえりその声は、薄暗がりで見えるその影は、本当に光と呼んでいいものか?
それが本当に美しく光と呼べるものならば、あたりに漂うこの血腥さはなんだ?
少年がその手に持っているそれは果たして本当にボールか?

それが確認できるほど近づいたのならば、覚悟せねばならない
その時あなたは昼を統べる人類に対する夜を統べる者──深淵の覇者たる一角、吸血鬼と相対することになる続き4行
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